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必要な前処理技術

必要な前処理技術 -破砕・粉砕・分離-

 マテリアルリサイクルするには、排出段階の分別と同時に、再資源化施設に投入するまでの破砕、粉砕などの前処理が必要であり、また再資源化工程では様々な分離技術が使われています。

1. 破砕・粉砕技術

(1)一軸破砕

 刃を取り付けた回転ドラムがひとつだけの破砕機で、破砕対象物をプレッシャーでこの回転刃に押し付けるようにあてて、削りとる感じで破砕されます。破砕物はスクリーンメッシュより小さく破砕されるまで回転ドラムと一緒に回転し、破砕が繰り返され、メッシュより小さくなったものはメッシュを通過し排出されます。スクリーンメッシュの大きさを変えることで調節されます。一定の径以下まで確実に破砕されます(一般には20~70mm)が、破砕効率はそんなに高くありません。

(2)二軸破砕

 刃を取り付けた回転ドラム(主軸と従軸)2つが絡み合っている破砕機で、破砕対象物はこの2つの刃により破砕されます。破砕刃を通過するのは1回だけで、破砕物の大きさは2つの回転刃の幅とフックの間隔で調整されます。大量の廃棄物を粗破砕するのに適しています。

2. 分離技術

(1)比重分離

 塩ビ樹脂の真比重は約1.4であり、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)など他の汎用プラスチックの真比重0.9~1.1に対して重いプラスチックです。水中では塩ビは沈降しますが、PE、PP、PSなどでは沈降しません。この比重差を利用して混合プラスチック中の塩ビをとりだす比重分離は最もポピュラーな分離方法です。

(2)風力分離

 予め破砕、粉砕された廃プラスチックを選別槽におくり、水平方向あるいは垂直方向から風をおくり、風に対する抵抗力とプラスチックの自重の違いで分離するもので、比重分離の一形態ともいえます。
一般に分離の精度はそんなに高くはありませんが、金属、土砂とプラスチックなど比重差の大きいものの分離手段として有効で、粗選別の手法のひとつとして広く用いられています。

(3)振動分離

 細かく粉砕した粒体に振動を与え、比重の異なるものが異なる挙動をすることを利用した分離技術で、比重の大きい金属、土砂などと比重の小さなプラスチックなどが分離できます。電線の粉砕物(ナゲット)から被覆材(塩ビ、ポリエチレン)チップと銅チップを異なる方向に集めて分離することなどに用いられています。

(4)静電分離

 電気的性質の異なる物質の混合体は『摩擦』などの外的要因により、それぞれの極性と電荷量を持って帯電する性質を持っています。

 静電分離技術の原理もこの性質を巧みに利用したもので、具体的には、摩擦帯電装置により塩ビはマイナスに帯電し、平行板電極でプラスに帯電したものと両極に分離された後、分離板で仕切られた3つの槽に回収される仕組みです。塩ビと比重差の大きいポリエチレン、ポリプロピレンは比重分離により除去できますが、塩ビと比重が近く、比重分離が困難なPETはプラスに帯電しますので、この方法で塩ビ/PETが分離できます。

(5)溶剤分離

 プラスチックの有機溶剤に対する溶解性の違いを利用した分離方法です。塩ビ樹脂は他のポリエチレンやポリプロピレンなどに比べると、分極し易い構造をもっているため、同じ分極し易い構造をもった溶剤に選択的に溶けます。この性質を利用し、塩ビを特定の溶剤で溶解、分離し、塩ビコンパウンド(塩ビ樹脂と配合剤)として回収、再資源化する技術(ビニループ)が欧州で運用されています。