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安定剤の種類と使われ方

 安定剤に使われる主な金属は、鉛(Pb)、バリウム(Ba)、亜鉛(Zn)、カルシウム(Ca)、錫(Sn)で、安定剤としては鉛系(以下Pb系)、バリウム-亜鉛系(以下Ba-Zn系)、カルシウム-亜鉛系(以下Ca-Zn系)、錫系(以下Sn系)に分類されます。 それぞれの金属は、金属単体として用いられるのではなく、Ba-Zn系、Ca-Zn系は、有機酸化合物(ステアリン酸塩等)の形で使われ、Sn系では、有機錫(ジアルキル錫化合物)の形で、Pb系では、ステアリン酸塩等の金属石けん以外に塩基性硫酸塩、塩基性炭酸塩、塩基性亜燐酸塩などの形でも使われます。更に、安定剤の機能を強化するためにエポキシ可塑剤、キレーターなどが金属を含まない純有機安定化助剤として必要に応じて添加されます。

カルシウムー亜鉛系<Ca-Zn系>

 Ca-Zn系は塩ビ樹脂安定剤全体の2割強を占め、電力通信系ケーブルを除く自動車、家電用などの電線被覆材の用途分野で、Pb系の代替安定剤として使用量が増えつつあります。またFDA(米食品医薬品局)に適合し、JHPA(塩ビ食品衛生協議会)で認定された低毒性安定剤として日用品分野(玩具、ホースなど)、医療用器具などの軟質塩ビ製品を中心に使用されています。

バリウムー亜鉛系<Ba-Zn系>

 Ba-Zn系は安定剤全体の1割強を占め、透明性が要求される用途のフィルム、シート類の軟質塩ビ製品には、欠かせない安定剤となっています。また、電気絶縁性にも優れることから、電線用途にも多用されています。

スズ系<Sn系>

 Sn系は安定剤全体の約1割を占め、透明性、耐候性も良く安定化効果に優れているため、加工温度の高い硬質塩ビ製品に使用されます。また、オクチルSn系、メチルSn系の安定剤は、FDA(米食品医薬品局)に適合し、JHPA(塩ビ食品衛生協議会)で認定された低毒性安定剤として、Pb系の代替安定剤となっています。

鉛系<Pb系>

 最も長い歴史を有する塩ビ用安定剤で、全体の4割近くを占めていますが、その使用量は年々減少しています。その安定化効果は抜群に優れており、長期の耐久性が求められる製品(電力ケーブル)や長時間の成形加工時間に耐える必要のある製品(大口径パイプなど)に使われています。
 その他、窓枠など、建材用途の異型押出の硬質塩ビ製品にも使われています。なお、Pb系安定剤は、有害性物質としてのリスクを極小化するため、人の口に接する可能性があるものや製品寿命が短く、使い捨て用途の多い軟質塩ビの日用品分野には使用されていません。

純有機系安定化助剤

 上記安定剤の機能を更に強化するために、エポキシ可塑剤、キレーターなど金属を含まない安定化助剤が必要に応じて使われます。エポキシ可塑剤は、可塑剤であると共に耐熱・耐光性の向上に非常に有効で、Ba-Zn系、Ca-Zn系安定剤には不可欠のものです。一方、キレーターとは、安定剤と塩化水素が反応して二次的に発生した金属塩化物を無害な形に封じ込めるもので、有機亜リン酸化合物などがよく知られています。

金属石けん

我々が日常使っている石けんは、天然油脂から製造される脂肪酸のナトリウム塩です。そのナトリウムの代わりにカルシウムや亜鉛、バリウムなどを使ってできた脂肪酸塩を金属石けんと呼びます。