===「塩ビと環境のメールマガジン」 第43号 === 2002/7/11

===================================================================

目 次

☆巻頭コラム
 塩ビはその揺籃期からリサイクル重視?!
 「戦後、アメリカのスクラップ塩ビに学んだ日本」

☆環境のまち上越に、塩ビリサイクル品を展示
 新潟県上越市の「環境フェア2002」に出展

☆お知らせ

===================================================================

☆巻頭コラム
 塩ビはその揺籃期からリサイクル重視?!
 「戦後、アメリカのスクラップ塩ビに学んだ日本」

 塩ビは資源循環型社会にフィットした素材です…、リサイクル
にもずいぶん昔から取り組んでいます…、と、私たちはいつも説
明してきましたが、つい先日、このことに関して興味深い話を聞
きました。むかしむかし、日本でも塩ビを製造しよう、と当時の
先進化学企業が塩ビの製造技術確立に苦労していた頃、アメリカ
から塩ビのスクラップが輸入された、そのスクラップを目にした
日本の研究者が、あまりの品質の良さにびっくり仰天した、とい
うのです。

 この話を聞かせてくれた方は、「塩ビというのはこんなに昔か
ら、いわば日本における塩ビの揺籃期から、スクラップをも重視
する、リサイクル重視素材なんですよ。」と主張されたかったよ
うですが(そしてそのことはまさにその通りですが)、一方、そ
ういう出来事があったという、歴史的事実にも私たちは興味を惹
かれました。

 調べてみると本当でした。日本における塩ビの生産は太平洋戦
争以前から小規模で進められていましたが、本格的発展は戦後に
なってからでした。当時は樹脂の製造も、製品の加工も緒につい
たばかりで関係者の苦労は大変だったようですが、そんなさなか、
昭和23年に、当時の商工省によるGHQへの働きかけで、アメ
リカから塩ビスクラップが、2回に分けて合計27トン輸入され
たというのです。このスクラップは、スクラップどころか、貴重
なサンプルとして扱われ、商工省の指示に基づき、当時のゴムメ
ーカー、電線メーカー、化学企業などに配布され、加工試験によ
る総合性能評価と同時に加工製品の試作が開始されたのだそうで
す。

 品質の良さについては、史実には明確には伝わっていませんが、
日本における塩ビ樹脂製造技術は、(やや難しくなりますが)乳
化重合法という方法で進められていました。一方、アメリカから
のものは、懸濁重合法で製造されたものでした。懸濁重合法の特
徴の一つは、製造時に乳化剤が不要であること。そのため、乳化
重合品では電気絶縁性が悪くて到底使用に耐えなかった、電線被
覆材用途に、使えるものが懸濁重合法でできていたのです。
 関係者にとってはまさに驚異だったのでしょう。その後まもな
く、昭和20年代後半から30年代前半にかけて、日本の企業は
一斉に乳化重合法から懸濁重合法に製法を転換し、高品質の塩ビ
を製造して社会に供給するようになり、今日に至っているのです。

 それにつけても、今もって不思議なのは、なぜアメリカは乳化
重合法でなく懸濁重合法を選択したのか、ということです。塩ビ
の製造法は、ドイツでも出発は乳化重合法、日本も最初は乳化重
合法です。専門家に言わせると、基本的に乳化重合法の方が、懸
濁重合法よりもはるかに易しい。なにゆえアメリカは、難度の高
い懸濁重合法に最初から取り組んだのか?どなたか情報をお持ち
でしたらご教示ください。

 因みに、このスクラップ塩ビから多くのことを学んだ日本は、
その後多種多様な製品開発を積み重ねて今日の塩ビの市場を作っ
てきました。上記のスクラップが輸入された昭和23年に早くも、
レザー、レインコート、ハンドバッグ、ベルト、ホース、などの
塩ビ製品の国産化が実施された、とあります。当時は塩ビはいわ
ば「夢の素材」だったのでしょう。今日振り返ってみると、隔世
の感あり、ですね。


===================================================================

☆環境のまち上越に、塩ビリサイクル品を展示
 新潟県上越市の「環境フェア2002」に出展

 新潟県上越市は、美しい自然と長い歴史に培われた都市で、人口
約13万人、昔の高田市と直江津市が合併してできた町です。先だ
ってこの市から私たちに、同市で開催される「環境フェア2002」
に出展して欲しいという依頼がありました。

 この街の近くには、私たちVECの会員企業である信越化学工業
(株)が生産拠点を有しており、また、上越市で環境調和型製品の
研究と流通の拠点作りとそのコーディネーター役を務めるべく発足
した、提案型NPOの「エコネット上越」とは、私たちは協力関係
にあります。

 塩ビに関する正確な情報を広く社会に対して発信し、塩ビを良く
理解していただくチャンスはできるだけ活用しよう、と考えている
私たちは、この上越市のご要望にお応えし、「エコネット上越」の
展示場の一角をお借りして、塩ビのリサイクル製品の実物などを展
示させていただくこととしました。

 展示会は6月29日(土曜日)、会場は上越市の市民プラザ、梅
雨の合間の晴天下に、約3,500人が来場されました。会場では
私たちのようなエコプロダクツの展示のほか、風力発電や太陽光発
電など新エネルギーの紹介コーナー、リサイクル関連ではマイバッ
グの紹介や中古本の直売、フリーマーケットのコーナーなどがあり
ました。また食と農のコーナーでは地元産野菜や加工食品の販売、
みどりのコーナーでは牛乳パックでハンギングを作る実演など盛り
沢山でした。来場された家族連れや若い人たちは、あちらこちらで
各種イベントに参加し、楽しいひとときを過ごしていました。

 私たちのブースをご覧になった方の大方の感想は、「塩ビってリ
サイクルは難しいと聞いていたけど、結構リサイクルされてるんで
すね」というもの。「こういうことなら、農業用ビニルにしても、
塩ビパイプにしても、安心して使えますね。」との事。少しでも塩
ビを理解していただけたかなという満足感と、一方では、いまさら
ながら、私たちの情報発信の不充分さを感じさせられました。

 私たちはこういった全国各地の催しに、できるだけ参画していこ
うと考えています。今回は地元のNPO「エコネット上越」の協力
もいただきましたが、さらに各地の市民団体との協力ももっと強め
ていきたい、お互いに循環型社会の実現を目指してそれぞれできる
ところから進めていきたい、と思っています。何かお役に立つこと
がありそうでしたら、遠慮なく御相談ください。


===================================================================

☆お知らせ

 ■展示会出展予定

  1.「おもしろサイエンス IN ソラール2002」
     7月23日(火)〜8月25日(日)
      山口県防府市青少年科学館 ソラール

  2.「ハウジングフェスタ2002」
     8月2日(金)〜8月4日(日)
      東京ビッグサイト 東3ホール
      (ゆりかもめ 国際展示場正門駅 下車)

===================================================================

☆編集後記

  最近、出色の出来と感心させられる地下鉄広告があり
 ます。「東京って住みよい街だねえ」と、カラスの大群
 が電信柱の周りに集まって、生ゴミ袋を囲んで宴会して
 いる漫画です。「ゴミはぜひ夜のうちに出して欲しいね」
 とか、「石原さんも大変だねえ」とか、しゃれた吹出し
 がついています。
  確かにカラスの傍若無人振りは目に余ります。H2の
 住む街の近くでも、ゴミの出し方が不適切な一角があり、
 ゴミ収集日の朝はまさにカラスの運動会です。
  カラス駆除の好い方法もなかなかないようですね。
 「焼き鳥ならぬ焼き烏、てのはどうかね」とうっかり嘯い
 たりすると、動物愛護団体からイチャモンがついたりし
 て・・・。(H2記)

===================================================================

[塩ビと環境のメールマガジン]

 発   行  塩ビ工業・環境協会
 編集責任者  佐々木 修一

 塩ビ工業・環境協会     https://www.vec.gr.jp
 塩化ビニル環境対策協議会  http://www.pvc.or.jp