NO.199
発行年月日:2008/10/30

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トピックス
◇アジア地域では建設ブーム − APVN総会にて −

随想
古代ヤマトの遠景(30)—【日前・国懸神宮の祭神】—
信越化学工業(株) 木下清隆

編集後記

トピックス
◇アジア地域では建設ブーム − APVN総会にて −

メルボルンで目にした桜
APVN会議風景
  メルマガでも何度か紹介しているAPVNの総会が、オーストラリアのメルボルンで先月末開催されました。9月末と言えば、日本は秋ですが、南半球のメルボルンは早春です。裸の街路樹が並んでいる一方で道路脇にはタンポポの花が咲き、庭木に咲いている桜の花を目にし、日本から11時間弱の南半球は「やはり春なんだ」と納得した次第です。

 さて、APVN総会は、アジア地域の塩ビ関連会社との環境問題等に関する情報交換の場ですが、今年はメンバー国11カ国中8カ国から30名ほどが集まり、1年ぶりに顔を合わせました。各国の話を聞いてみると、インド、パキスタン、オーストラリアなどは建設ブームで建材分野の需要が好調だとのこと、日本から見ればなんともうらやましい状況のようです。しかし、ブームの一方で悪徳商売とは言わないまでも、品質の劣るパイプを扱う業者がいて、塩ビのイメージを悪くしてしまうという現象が起こっているとのことです。その背景には、塩ビパイプの統一規格がないという問題があります。その対策として、マレーシアではパイプメーカーが集まって業界の品質マークを制定したり、タイやインドネシアでは日本の規格を参考にするなど、塩ビパイプの品質を守る活動に取り組んでいます。

 また、窓枠というと、寒い地域の定番のように思われがちですが、インドでは、建築物のエネルギー基準が制定されたことにより、エネルギー効率(断熱効果)の良い製品として、塩ビ窓枠と塩ビ製ドアーが注目されています。そのため、窓枠メーカー10社が集まって、窓枠の基準作りやプロモーションビデオを作製し、普及活動を開始したとのことです。樹脂サッシ普及促進委員会でも日本の北の地域ばかりでなく、南の地域にも窓枠の普及を図っているところですが、インドのこのような活動は、夏の暑さ対策でも塩ビ窓枠が大きな効果を期待されているという、まさに良い事例になるのではないでしょうか?

 一方、環境問題の話題として、インターネット上に残っている誤解に基づく、日本のNGOの古い資料を現地語に翻訳し、塩ビを含む「プラスチックは危ないもの」とTVやインターネットで紹介する市民団体がいることや、先般もメルマガで紹介した、米国で報道された塩ビシャワーカーテン問題(あるNGOが塩ビシャワーカーテンから有害物質がでるとセンセーショナルに報道したが、試験方法が不適切であり、その後、公的機関が安全性を確認し主要なメディアもこのことをきちんと伝えた事件)が、マスコミでセンセーショナルに取り上げられた国があったということです。これらの国では、書面や直接対話によりこのような動きに対し、対処している様子が報告されました。また、建築分野では、アジア地域でも日本でいうCASBEEのようなグリーンビルディングの評価システムの検討が始まったり、エコラベルにおける塩ビの取り扱いが話題になりつつあります。日本では塩ビに対する理解が進み、エコマークの認定基準の考え方が変わってきたことやグリーン購入の動きなどを会議で紹介しました。

 APVN総会は、年に一度の情報交換の場ですが、企業や行政さらには一般消費者に塩ビ製品の環境有用性を認識してもらうため、各国の対応状況などの情報交換がますます重要となってきています。来年の総会は、日本で開催することを決議しメルボルンでの会議を終えました。(了)

随想
古代ヤマトの遠景(30)—【日前・国懸神宮の祭神】—
信越化学工業(株) 木下清隆

  前回までに日前・国懸神宮の祭神探しを続けたが、この神宮の祭祀を司っていたのが紀直(きのあたい)氏であり、彼等の出自が出雲であると想定されることから、この祭神問題も推定が付くことになる。即ち、「祭神は出雲系の神である」と言うことになる。更に両宮の祭神は次のようにそれぞれ想定されることになる。
日前神宮の祭神
初代倭王
国懸神宮の祭神
神魂神
古代「伊都国」(1〜2世紀頃)から発掘された巨大銅鏡。八咫鏡もこの程度のものと想定される。
理由は、日前神宮は御鏡、国懸神宮は日矛を御神体としているからである。鏡をご神体とする風習がいつ頃誕生したのかは定かではないが、これを死者の棺の内外に置いて埋葬する風習が産まれて以降と考えられる。弥生時代においては一般に鏡を破って埋葬していたものが、古墳時代になると破鏡の習慣が無くなる。この時代以降、鏡と埋葬者の関係が生まれてきた可能性がある。何か鏡が霊魂を写し留めると言った考え方が産まれてきたと想定されるからである。それは3世紀末から4世紀初頭にかけてと考えられるが、この時代は、3世紀中葉の卑弥呼の時代に登場した三角縁神獣鏡が、その盛期を過ぎて衰退する時期と重なる。そしてまた、初代倭王の死の時期とも重なる。この時代以降、特定の偉大な人物が亡くなったとき、その御魂を祀るために霊代(たましろ)として鏡が用いられるようになったのではなかろうか。更に時代が降ってその人物が神に昇格したときは、その鏡がご神体となったと言うことであろう。

 実は日本書紀の中にこのような考え方を示唆する記述が残されている。それは天照大神が、天忍穂耳尊(あめのおしほみみのみこと)を天孫降臨させる時、尊に宝鏡を授け、「吾が児よ、この宝鏡を視るときは、これを私だと思って視なさい……」と述べている個所があるからである。このことから、書紀が編纂された時代においては、特殊な場合として、鏡が人の霊代として用いられるとの解釈があったことを示している。このように考えると日前神宮は鏡をご神体としていることから、その祭神は特定の人物でなければならず、そうであれば、初代倭王以外にその祭神を考えることはできないことになる。
 出雲神門地方の人々が、初代倭王の要請で名草地方へ移住してきたとき、先ず彼等がやったことは自分達の祖神、神魂神を祭祀することであったはずである。恐らく小さな祠だったと考えられるが、それが後年、国懸神宮と呼ばれるようになったということである。その後、初代倭王が亡くなりその御霊を祀ることになったとき、霊代として鏡が用いられるようになったと考えられる。鏡の採用は或いは後年になってからかも知れない。こうして日前神宮は誕生した。出雲の人々にとっては両宮共、まさに自分達の宮である。だから両宮を一体のようにして祭祀を続けてきたと云うことである。

 次ぎに両宮が神階を受けなかった問題であるが、ここまで来れば話は簡単である。先に示したように伊勢神宮は初代倭王が祀られており、その後、天武朝になって天照大神と改名されたと解釈している。そうであれば、日前神宮は伊勢神宮と全く同格と云うことになり、従って神階は授けられなかったということになる。これに対し国懸神宮の方は、神階を授けられてもよさそうであるが、これは地元が両宮を一体として祭祀していることから、そのままにされたということであろう。
 初代倭王を祀る神社は全国に沢山あるが、それらに対しては神階が与えられている。これについてどう解釈すべきかの問題があるが、これについては年月の隔たりと、心理的な隔たりが影響しているように考えられる。日前神宮に神階が与えられなかった理由としては、そこでの初代倭王の御魂の祭祀が、極めて早い時期に始まったことが挙げられよう。初代倭王の没後、その御魂は宮中とこの日前神宮で祭祀されていたと考えられ、しかも日前神宮の関係者が皆同じ出雲人だったことから、当時の宮中の人々にしてみれば、大和と名草では距離的にも近く、従って、両所で祀られている御魂は全く同じ、との意識が有ったものと考えられる。それ以降、各地で祭祀された初代倭王の御魂は、名草のものとは心理的に異なるとの意識が生まれたと云うことであろう。このような意識が連綿として受け継がれ、8世紀後半頃から始まった神階授与にも影響を与えたと云うことであろう。

 これまでの論証により、次のようなことが結論として云えよう。
(1) 日前・国懸神宮は出雲系の神宮であり、初代倭王がこの地を通過した重要な物証と云える。
(2) 大己貴命と少彦名命による「国造り神話」、及び神武天皇の記録とされる「神武東征譚」は、初代倭王が成した史実の一面を、主人公の名を替えて記録した物語と云える。

 次回はもう一つ重要な物証の話を紹介することにする。(続く)

前回の「古代ヤマトの遠景」は、下記からご覧頂けます。
古代ヤマトの遠景(29)・・・【紀直氏】

上記以前の「古代ヤマトの遠景」のバックナンバーは、以下のアドレスからご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

編集後記
 朝晩ひんやり、日中との気温差の大きなこの時期は日本列島の北と南の寒暖差が拡がるときでもあります。24節気の霜降、冬の入口の立冬ももうじきです。自然はこの時期、冬に備えた準備に入っています。我々の目を楽しませてくれる樹々の紅葉も、VECの傍の亀島川に北からのお客さんの冬鳥たちが飛来するのもその準備のためです。
 サブプライム住宅ローンの破綻から始まった米国発の金融危機が荒れ狂い、世界中が冬の時代に入ろうとしています。自然は着々と冬の準備を進めているのに我が日本はちゃんと手を打っているのでしょうか?20年代の大恐慌、90年代の日本のバブル崩壊、当時の米国や日本はいずれも対外債務国ではありませんでした。しかし今の米国は400兆円近い対外債務の国、尻拭いを日本にも迫ってくることは目にみえています。余り実害がなかったのに気がつけば日本が一番割りを食ったということのないように為政者の皆さんには是非々々お願いしたいところです。(丸茶)

VEC関連URL
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●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
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