NO.186
発行年月日:2008/07/24

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トピックス
◇欧州 塩ビ製品リサイクルの現場を訪ねて(その2)
−Recovinyl認定リサイクラーと再生製品メーカー−
塩ビ工業・環境協会 柳 良夫

随想
情報はタダ?(連載18)
国際連合大学 上野 潔

お知らせ
【NEW】「からだにいいこと」webに塩ビサッシムービー掲載
【NEW】VECホームページを更新しました。
【NEW】グリーン・サステイナブル ケミストリー賞の募集始まる

編集後記

トピックス
◇欧州 塩ビ製品リサイクルの現場を訪ねて(その2)
−Recovinyl認定リサイクラーと再生製品メーカー−

塩ビ工業・環境協会 柳 良夫

 メルマガ7月3日号(No.183)のドイツにおける廃塩ビ製品リサイ クルの事例に引き続き、今回はそのお隣、ベルギーとフランスの事例、 Rulo社とHVD(HVDeveloppement)社について紹介します。

工場端材(窓枠)
 1つ目のRulo社はブリュッセルから西に100キロ余りいったベル ギー西部にあり、以前このトピックスで紹介した欧州の廃塩ビ製品の 収集システムRecovinylの認定リサイクラーのひとつです。同社はベル ギー全土(といっても西から東まで200kmくらいしかないので関 東地方くらいの広さですが)から収集会社の手で選別回収された主に 硬質塩ビ廃製品を引取り、再資源化して硬質コンパウンドを年間10 ,000〜12,000トン製造、販売している会社です。
 我々が訪問した時には殆どが塩ビサッシの端材と使用済廃材、それ と塩ビボトルの工場端材を受入れて処理をしていました(欧州では塩 ビ製のボトル容器は現在でも沢山使われています)。ここベルギーで もドイツと同様、塩ビのリサイクルはサッシを中心に動いていること をあらためて認識しました。欧州の塩ビサッシ市場は110万トンを 超える巨大マーケットで、それだけ端材、使用済み品の発生量も多く、 このことが塩ビサッシのリサイクルを成り立たせている大きな要因に なっているといえます。

再生原料
再生製品(カーマット)
 次に紹介するHVD社はRulo社よりさらに西、フランスとの国境Wervik という小さな町にあります。町の中心地はベルギーですが小川(これ が国境?)を渡った工場のある場所はフランス国内、したがってフラ ンスの会社です。この会社はRecovinyl認定リサイクラーから再生軟質 コンパウンド材料(主にブーツ、電線などの軟質塩ビ製品からのもの) を購入し、射出成形してカーマットを製造しています。
 同社はこの工場以外にも2006年からは中国にも進出し、フラン ス国内と同じ原料で製造した製品を欧米マーケットに販売しています。 フィアット、プジョー、シトローエン、日産、フォード、フォルクス ワーゲンなど欧州の主要自動車会社で使用されており、近年は最も品 質の厳しいドイツ市場にも使用が拡がっているとのこと。信頼できる 品質の廃塩ビ製品の安定集荷により再生塩ビコンパウンドの品質確保 が可能になったためで、それにはRecovinylシステムが大きく貢献して います。そして何よりも塩ビ製のカーマットが安価で使い勝手の良い ことを欧州の自動車メーカーが理解していることにあります。

日本では、従来から実施されてきた管・継手や農ビのリサイクルに 加え、最近は新しい技術によるタイルカーペットのリサイクルにも進 展がみられ、国内の塩ビ製品のマテリアルリサイクルの量は欧州のマ テリアルリサイクルの全体量に近いレベルにあります。欧州の塩ビ製 品マーケットが樹脂消費量で日本の4〜5倍であることを考えれば、 日本は欧州以上にマテリアルリサイクルを進めていることが分かりま す。それでもRecovinylシステムの普及が拡大していることや資源の高 騰、埋立規制の強化などの要因から、欧州では塩ビのリサイクルはさ らに進展すると期待されています。今後の推移を注目してゆきたいと 思います。(了)

前回(その1)は、下記からご覧いただけます。
https://www.vec.gr.jp/mag/183/index.html#topics

随想
情報はタダ?(連載18)
国際連合大学 上野 潔

 駅のゴミ箱や、電車の網棚から新聞や雑誌を回収している人がいま す。最近は本格的な回収袋を持って、明らかに回収を生業にしている 人々を見かけるようになりました。かなり組織化されているようで、 回収された新聞や雑誌の袋を駅の片隅で現金で買い取っている親分風 の姿も見受けます。集めた新聞や雑誌は再販売されているようですが、 これだけが目的ではなく、紙のマテリアルリサイクルが目的の場合も あると思います。実態は不明ですが、古い雑誌を広場や路上で販売し ている情景は日本だけでなく欧州でも見かけます。いづれにしても廃 棄物の有効利用なのだと思います。暴力団の資金源という人もいます が、通行人や乗客に迷惑にならなければ、良いことだと思うのです。

 しかし、立派な身なりをした紳士?が通勤途中で、ゴミ箱から真剣 に新聞や雑誌を漁ってそれを読む姿を見かけると無性に悲しくなりま す。わずか、100円程度の新聞や数百円の漫画本を買わずに拾って タダ読みするのです。
 新聞や雑誌は掲載記事や漫画を情報と言う著作物として有価で販売 しているのです。スクープに職業意識を燃やしている報道機関では、 朝刊は夕方になれば正に古新聞で紙くず同然でしょう。「いいじゃな いか。どうせ捨てたものだから拾って読んだって」という声が聞こえ て来ます。おそらく「捨てたらゴミ」であり、そこに掲載されている 著作料も最初に購入した人が支払っているから同時に「廃棄」された とみなされるのでしょう。落ちている物を拾って食べることはしない けれど、情報はゴミ箱から拾って読む。それでは身なりは立派でも乞 食と同じです。

 米国での冗談として、友人の弁護士に電話で愚痴を言ったら、しば らくしてから相談料として請求書が来たという話があります。その場 合は、逆に「愚痴」という情報提供料金を弁護士に請求したらよいの かもしれません。最近は「著作権」の考え方が常識になって、書物の 無断引用が犯罪であることが広く知られるようになって来ました。他 方でこのメルマガもそうですが、いろいろな情報が「無料」で即座に 入手できるようになっています。
 しかし、環境に関する情報は「眉につばを付けて」少し時間を置い てから見直したほうが良い場合が沢山あります。数年前ですが、「テ レビからダイオキシン!」なんて新聞記事が朝刊にでました。正しく は「テレビに溜まった埃から」なのですが、テレビからダイオキシン が出るような錯覚をします。「所沢の葉っぱものからダイオキシン!」 も視聴率稼ぎのテレビタレントの恣意的な誤報でした。人のうわさも 75日ですが、「ダイオキシンは猛毒」という印象は、今でも生きて いるようです。今頃になって「塩ビは廃棄時に有害物質が出る懸念が あり」としてデジタル家電新製品の内部配線や電源コードをポリエチ レンなどの代替素材にすると発表した会社もあります。「環境を利用 できるなら何でもやれ」という経営者の顔と、真実を知っている環境 担当部門の渋い顔が目に浮かびます。

 ある大学で学生に、「環境に関する情報で新聞情報を鵜呑みにする ことは危険です。最低限複数の新聞を見比べることが必要です」と言 ったら先輩の先生から「上野さん、心配は不要です。学生は新聞なん て読んでいませんよ」といわれました。
 最近は情報を得るために図書館に通うなんて面倒なことはせず、W ebで検索すれば知識はすぐに手に入り、カット&ペーストでレポー トも簡単に出来るようです。リベラルアーツといって教養学が再評価 されているようですが、情報がタダで手に入る現代では、逆に物理、 化学、数学、そして哲学など、浮世離れした基礎科学をみっちり学ん だ学生が必要だと思います。40年前に流行った「未来学」は結局す べて外れましたからね。

 今一番ホットな話題は、石油埋蔵量のデータ情報を基にした石油ピ ーク論や温暖化対策論です。石油のデータはかなり高価で販売されて いるようですが、同じ情報を基にしながら、「石油楽観論」と「石油 悲観論」の二派があるそうです。自費で購入したデータを使用して論 戦を張るならまだ許せるのですが、大半は孫引きの無料情報からでは と思います。ノンフィクション作家の立花隆氏は、「確認埋蔵量、究 極埋蔵量、発見量、コストなどなど石油の可採年数にかかわる基礎デ ータの数値はいずれも曖昧である。立場によっていかようにでも変化 する。・・・それは自然科学的物理データではない。・・・きわめて 心理的かつ政治的な数値(現在値も予測値も)なのである」(週刊文 春7月3日号「私の読書日記」から引用)と、述べていますが鉱物や 石油資源の可採データは実験室で再現できるものではないので、全く その通りであると思います。
 石油といえば、石油由来プラスチックですが、プラスチックの製造 残存寿命も当然ながら石油の可採年数とともにあるのでしょう。塩ビ はオレフィン系プラスチックの半分しか石油を使わないので塩ビの製 造残存寿命も通常のプラスチックの2倍と算定してよいのでしょうか? これは塩ビ工業会員諸兄に計算していただきたいですね。もっとも情 報が曖昧では計算しても無意味でしょうね。(了)

前回の「百聞は一見にしかず(連載17)」は、下記からご覧頂けま す。
https://www.vec.gr.jp/mag/183/index.html#zuisou

バックナンバーは、以下のアドレスからご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

お知らせ

【NEW】「からだにいいこと」webに塩ビサッシムービー掲載

 30代〜40代女性向けの健康生活情報誌「からだにいいこと」の web版に塩ビサッシに関する動画が掲載されました。
(9月中旬までご覧いただけます。)

下記アドレスのページの  <<右上>>  にある
*** 『「塩ビ」のチカラ実感ムービー』 ***
からご覧ください。

http://www.shodensha.co.jp/karakoto/

【NEW】VECホームページを更新しました。

6月度の塩ビの生産出荷データ掲載。
https://www.vec.gr.jp/enbi/seisan.htm

【NEW】グリーン・サステイナブル ケミストリー賞の募集始まる

 グリーン・サステイナブル ケミストリー(GSC)ネットワーク とは、化学技術の革新を通して「人と環境の健康・安全」を目指す組織です。
 化学系の学会・団体および国立研究所により、2000年3月に設立されました。
 VECは、GSCネットワークを構成する団体の一つとして協力しています。

 GSCネットワークでは、「第8回(2008年度)グリーン・サステイナブルケミストリー賞」を募集しています。

募集期間 : 2008年7月1日(火)〜10月31日(金)

詳細は、グリーン・サステイナブル ケミストリーネットワークのHPをご覧下さい。
http://www.gscn.net/

募集問合せ先 : gscn@jcii.or.jp

編集後記
「鰻を食べて夏バテしないように」
 今日は土用丑の日。産地偽装で何かと騒がしい鰻業界。とある鰻屋 でこんな話を聞きました。『入り口に「愛知三河一色産の鰻です」。 産地偽装なく幡豆郡一色町の養鰻場から買っている。でも実は里帰り 鰻だろと客から聞かれることがある。苦肉の策で「本当」と書き入れ たがいっこうに聞かれる回数は減らない。』
 そもそも土用の丑の日に鰻を食べようとキャッチコピーを発案した のは江戸時代の平賀源内。夏場の売り上げ不振に悩んだ鰻屋に頼まれ 考えだしたと言われている。
 正しい産地の鰻は原価が高くて儲からない。でもおいしい鰻を多く の人に食べて欲しいそんな商売をしているところもある。お好きな方 は今年も食べて、これからの暑い夏を乗り切って下さい。(リマル)

VEC関連URL
●家族で学べるページ https://www.vec.gr.jp/kids_new/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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