◇「健康・省エネのための住まいを推進するシンポジウム」の報告
|
樹脂サッシ普及促進委員会 事務局長 川並則夫 |
去る6月3日(火)に経団連会館にて「健康・省エネのための住まいを推進するシンポジウム」が開催されました。主催は「NPO法人シックハウスを考える会」「安全な住環境に関する研究会」の両団体で、塩ビ工業・環境協会も協賛いたしました。
冒頭、上原裕之氏(シックハウスを考える会理事長・安全な住環境に関する研究会事務局長)から、社会の利益・国民の利益のために世界一の住宅を目指しましょうとの以下のような開会の挨拶がありました。
この活動は、国民一人一人のために各種団体(関係省庁、産業界、医療界、消費者団体等)が大同団結して、国民の合意を勝ち取って進める必要があります。特に医学と建築学とのコラボレーションという意味では、いわゆる学際のテーマであり、これまで各種個別の実例の紹介はなされていますが、本格的な取り組みはこれからのことになるでしょう。これが、日本が世界に先駆けて始める「健康・省エネ」の起点となり、近い将来日本の健康と省エネ、社会保障対策等を融合したノウハウ、技術、製品が世界中の人々に役に立つようになればと考えているとのことでした。
以上のことが実現できれば、日本発の住宅関連技術を世界に向けて発信でき、日本は自動車以外の技術にて世界のキーステーションになる可能性が広がることになります。
続いて、基調講演が4件行われました。
最初に、「温暖化対策と健康・省エネ住宅の動向」というテーマで東京大学大学院建築学教授坂本雄三先生が、住宅関連(窓の断熱リフォームの有用性)・省エネ基準の改正・補助金による助成策・健康維持増進研究会等、全体の流れについて説明されました。
2件目は、「日本の住宅における省エネと健康と住宅性能に関する現状と問題点」について実際に住宅リフォームに携わる、有限会社親和創建取締役大滝典子先生から構造躯体の再利用による断熱改修工事の実例についての説明があり、施主の立場になって設計を考えることが大切であるとのお話がありました。
3件目は、医学的立場として「わが国における脳卒中の現状と予防のための住宅改善に対する期待」について大阪府立健康科学センター健康開発部長北村明彦先生から、特に脳卒中の地域差について、北海道は少なく東北地方が高くなっている等、興味深い報告がありました。住宅居室間(居間やトイレ、脱衣所、浴室等)の温度差によって起こる脳卒中の予防のための住宅改善に対する期待を表明されました。
4件目は、安全な住環境に関する研究会幹事である、近畿大学理工学部建築学科准教授岩前篤先生より「安全な住環境に関する研究会の研究報告・今後の研究の方向性について」お話がありました。本研究会のこれまでの活動報告と本年度の実施計画として、居住者の健康性とカビ・温熱環境・化学物質濃度等の実態把握及び因果関係の明確化等のデータ蓄積を開始したこと、更には医学と建築学の専門家の連携ネットワークの構築計画等が公表され、具体的活動の開始が表明されました。
その後、「地球環境を守り国民の健康を守る観点から省エネ住宅促進に向けた国民運動推進について」と題してパネルディスカッションが行われ、関係省庁、産業界、医療界、消費者団体のリーダーが集まり、「地球環境の保持・国民の健康を守る・省エネ住宅の促進」にて、各界は大同団結して進むべきであるとの力強い議論が展開されました。
今回のシンポジウムは、健康と省エネを本格的に取り上げ、日本の住宅の質の向上を図ることにより、新たな住宅産業を振興するための開始点になったのではないでしょうか。今後の具体的な展開策を如何に推し進めるかが、益々重要になってきています。
一方、7月の洞爺湖サミットをひかえて、来週6月19日(木)〜21日(土)には札幌ドームにて「北海道洞爺湖サミット記念環境総合展」が開催されます。
塩ビ工業・環境協会としても、この総合展に出展し、「人と家の健康・長寿に貢献し、地球温暖化対策としても大きな効果がある樹脂サッシ」を中心に、製品展示・パネル説明・パンフレット配布等を行います。これを機会として、北海道が有する優れた断熱技術と本州以南の遮熱技術等を組みあわせて全国に展開すべく、関係者との協働を進めようとしています。又、この期間中に樹脂サッシ普及促進委員会としても、シックハウスを考える会と協働して健康データの取得を依頼する活動等も展開してまいります。
今後とも、益々健康と省エネ、長寿命を切り口として、日本の住宅の質的向上を目指して奮闘したいと考えております。(了) |
|