NO.169
発行年月日:2008/03/21

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トピックス
◇建材のDEHP放散測定法のJIS規格公示 −塩ビ業界も貢献−

随想

極めて個人的な中国観/中国リサイクル産業現地調査から(第2回)
−中国のホテル事情2−

株式会社産業情報研究センター 調査・情報室長 林 廣和


お知らせ
PVC Newsが3/19に発行されました。

編集後記

トピックス
◇建材のDEHP放散測定法のJIS規格公示 −塩ビ業界も貢献−

 1990年代ごろから、新築住宅に住む人が、頭や目が痛くなったり気分が悪くなるなどいわゆるシックハウス症状を訴えるようになってきました。これは、新建材と呼ばれる素材や多様な化学物質が使われるようになったり、それまでの住宅と比べ気密性の高い住宅に住むようになったなど日本の住宅事情が変わったことが要因と考えられています。そこで、厚生労働省はシックハウス対策に力を入れ始め、1997年にホルムアルデヒドの室内濃度指針値を定めました。それに引き続き、厚生労働省は広く市民の要望を聞くためパブリックコメントを求め、2002年1月までの間に13の化学物質の室内濃度指針値と総揮発性有機化合物(TVOC)の暫定目標値を設定しました。この室内濃度指針値の意味は、シックハウスの原因物質だからというのではなく、室内空気環境汚染の改善または健康で快適な空気質の確保を目的としたものです。
 実際の化学物質の室内濃度の実態調査によれば、ホルムアルデヒドやトルエン、キシレンなど一部の化学物質に室内濃度指針値を上回るケースがありました。このような背景の下、2002年7月には建築基準法が改正され、シックハウス対策として2種類の化学物質、クロルピリホス(使用禁止)とホルムアルデヒド(使用制限)が規制されることとなりました。

 さて、塩ビ製品と室内濃度指針値の関係はというと、住宅には塩ビ壁紙やクッションフロアーなどが多く使われることから、塩ビ製品に使われる可塑剤であるフタル酸ジ‐2‐エチルヘキシル(DEHP)が空気中に放散する可能性があることです。実際の室内濃度測定の結果では、指針値と比べ2桁も低いことはわかっていましたが、DEHPを含有している塩ビ製品の製品評価のため、業界としても放散量試験方法の開発が必要となっていました。
 折りしも、経済産業省では、2002年よりシックハウス対策に関わる建材の測定法のJIS化整備に取り組んでいました。その成果の一つとして、ホルムアルデヒドや揮発性有機化合物(VOC)の放散測定方法(JIS A 1901)があります。ところが、DEHPは沸点が高いため、空気中に簡単に出てくるようなものではなく、空気中に飛び出した分子は空気中に漂うことなくほこりとか周辺の素材に吸着してしまうという性質を持っているため、このVOC放散測定法をDEHPの放散量測定としてそのまま適用できないことが分かってまいりました。

 塩化ビニル環境対策協議会を中心とした塩ビ業界でDEHPの放散量測定の検討を始めた2002年ごろ、ある分析機器メーカーがDEHPのような低揮発性物質の放散速度を測るための装置を開発していました。業界では、早速その方法を追試し、その分析機器メーカーや分析センターと共同で試行錯誤の末、マイクロチャンバーと呼ばれる試験材料を設置する硝子容器に工夫をすることにより測定の再現性を向上させ、実用化できる方法として完成させました。

 前述の経済産業省のJIS化整備に取り組んでいた建材試験センターのSVOC測定法部会(部会長、田辺信一早稲田大学教授)では、2003年から3ヵ年に亘りこの方法を含め各種試験法の評価と審議を行った結果、塩ビ業界が開発してきたマイクロチャンバー法が一番信頼性が高いとしてJIS原案としてまとめました。その原案を基に経済産業省工業標準調査会での審議を経て、このたびようやくJIS規格(JIS A 1904)「建築材料の準揮発性有機化合物(SVOC)の放散測定方法−マイクロチャンバー法」として成立、公示されました。
http://www.jisc.go.jp/newstopics/2008/080220sikkuhausutaisaku.html

 塩ビ業界が取り組んできた測定方法が、JIS規格の原案として評価されたことは非常に大きな意義があると考えます。なお、塩ビ業界は上記JIS規格を審議された一部委員指導の下で、天井・床、四方の壁の全面を塩ビ製品で内装したモデルルームを使って、一年間に及ぶ長期室内濃度測定を行った結果、塩ビ壁紙や塩ビ床材から放散されるDEHPの室内濃度は、指針値を大幅に下回っていることを確認しております。(了)

随想
極めて個人的な中国観/中国リサイクル産業現地調査から(第2回)
−中国のホテル事情2−
株式会社産業情報研究センター 調査・情報室長 林 廣和

 ところで、中国のホテルはチェックインに際して保証金を取るのが普通である。しかし、チェックイン前に前金の振り込みを要求されたことはない。いや正確には、2006年の金門酒店を除いて、後にも先にも経験がない。その年、訪中前の準備でアルバイトの留学生たちに訪問各地のホテルに予約を入れてもらった時、上海の金門酒店から前金6,000元の振り込みを要求された。
 初めての経験であったこともあるが、そもそも中国への送金は結果的にうまくいかず送金をやり直さなければならないこともよくある。手数料はその度に発生し、これがばかにならない。そこで、これらの事情を説明し、日本からの送金はしたくないと言うと、中国入りしてからでいいと言う。不満であったが、6人分の予約を確保する必要があり、北京入りしてから振り込むことを条件に了解を得た。

 北京で中国石油化学集団公司(SINOPEC)を訪問した際、同公司のSさん(初めての訪中以来の知人である)に、近くの銀行から上海のホテルに前金を振り込みたいことを伝えた。すると彼は、どうしてそんなことをするのかと逆に質問してきた。事情を話すと、そういう話は聞いたことがないが、本当に6,000元振り込んでいいのかと言う。SINOPEC関係者の意見は、振り込まなくても大丈夫だということであった。そう言われても、上海に入ってみたら予約が取り消されていたといったことになると、改めてホテルを探すのも面倒であり、6人でスーツケースを抱えてうろうろしたくない。結局、送金することにし、近くの中国銀行から送金した。

 その日、我々は天津で1泊し、翌日の夕方に天津から空路上海入りして空港から金門酒店に直行した。ホテルは南京路に近く、地下鉄も近いなど立地的な条件は申し分なかった。しかしチェックインの際に改めて保証金を要求され、ここから話が混線し、こじれることになる。すでに北京から送金したお金はどうなるのかと確認すると、入金が確認されていないという。
 正式な印が捺してある中国銀行での振り込みの控えは所持しており、すでに送金からまる2日が経過している。改めてクレジットカードで保証金を取るのであれば、まず振り込んだ額を戻してもらおうと考えるのが普通である。しかしホテル側は、入金が確認されていないので、それはできないという。我々日本人とホテルのフロントマネージャの間に微妙な緊張感が芽生え始めた。後で思うに、かつて経験したことがないホテルのフロントマネージャとの激しいバトルはこの時すでに始まっていた。

 私の中で“金門事件”として記憶されているこのバトルは、予想外の展開となった。最初は通訳のRさんを通してやり取りしていたものの、いっこうに埒が明かない。その時、中国語が堪能な訪問メンバーの一人であるA女史が静かな口調でホテル側の姿勢を正した。通訳の中国人以外に中国語が喋れないと思っていたフロントマネージャは、中国語が喋れる日本人の新たな参戦者の登場に少し面食らったようであった。中国語を喋る日本人がいたこと自体、別に驚くほどのことではないが、彼の想定の外にあったこのシチュエーションが彼の笑顔を強張ったものにさせたのであろう。しかし、なんともいえない笑顔を崩さず頑なな姿勢を続けるフロントマネージャの態度がA女史をいたく刺激し、彼女に本格的なファイティングポーズを取らせてしまった。
 この時、私には小柄なA女史が勇猛果敢な戦士のように見えた。一方、通訳のRさんを除く私を含む男性5人は、フロントマネージャに怪訝な視線を投げかけたまま、事態の推移をただただ見守るという情けない光景が展開されていた。言葉が判らないとはいえ、男性陣にとってなんとも滑稽で思い出すのも忍びがたい構図であった。

 結局、私はクレジットカードで改めて保証金を支払うことを承諾し、チェックインすることにしたが、A女史の怒りは治まらず、翌朝全員チェックアウトし、別のホテルに移ることになった。翌朝、我々はフロントにスーツケースを預け、ホテルには入金を確認するように要請し、チャータした商務車で仕事に出かけた。夕方、預けた荷物を取りにホテルに立ち寄ると、入金が確認できたので返金したいという。我々はホテルを移る考えは変えず、お金を受け取り、金門酒店を後にした。おそらく、このメンバーは今後、金門酒店には2度と宿泊しないであろうと思いつつ。(続く)

前回の「極めて個人的な中国観」(第1回)−中国のホテル事情1−は、
下記からご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/165/index.html#zuisou

お知らせ

PVC Newsが3/19に発行されました。

 PVC News 64号(塩化ビニル環境対策協議会)が発行されました。
目次をご紹介致します。

◇トップニュース
動き始めた「塩ビリサイクル支援制度」
◇視点・有識者に聞く
高まる科学コミュニケーションの必要性
日本科学未来館 工学博士 山科直子氏
◇リサイクルの現場から
(株)川島織物セルコンのタイルカーペットリサイクル
◇インフォメーション
塩ビサッシによる省エネリフォームが減税制度の対象に
◇インフォメーション
注目!使用済み塩ビ壁紙を活性炭化物にリサイクル
◇塩ビ最前線
塩ビ製「防災型ウォーターフェンス」


以上、塩ビリサイクル関連の最新情報を中心にご紹介しています。

記事内容は、こちらからご覧頂けます。
http://www.pvc.or.jp/index/i_saisin.html
PVC Newsバックナンバーは、
塩化ビニル環境対策協議会のHPよりご覧頂けます。
http://www.pvc.or.jp/

編集後記
 久しぶりの冬らしい今年の冬も終わり、いよいよ春です。協会近くの亀島川の水鳥たちも北へ帰る季節になってきました。
 中国のホテル事情の第2回目、料金の支払いを廻ってのバトル凄かったですね。何度も訪中経験のある林氏でさえこうなのですから。余程中国事情に明るい人と一緒でないといろんなトラブルにあいそうです。最近の新聞情報だと北京ではホテルの宿泊料金が五輪期間中は軒並み通常料金の4倍から5倍、中には10倍以上の設定で期間中は全泊でないと駄目、しかも料金前払いとか、いやーなかなか彼の国はしたたかです。日本の常識ではとても押し測れない国のようであります。(丸茶)

VEC関連URL
●家族で学べるページ https://www.vec.gr.jp/kids_new/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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