NO.161
発行年月日:2008/01/24

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トピックス
◇可塑剤(フタル酸エステル)の安全性確認の取組み

可塑剤工業会 技術顧問 長谷川 隆一


随想

シオビの時代のコミュニケーション −マーケット・インとPRの両輪で−

VEC 加地


お知らせ
【NEW】環境を考えた北海道の住宅づくり In 旭川 のご案内
ENEX2008 第32回地球環境とエネルギーの調和展 出展案内
ハロッズバッグ・プレゼントクイズ実施中!

編集後記

トピックス
◇可塑剤(フタル酸エステル)の安全性確認の取組み

可塑剤工業会 技術顧問 長谷川 隆一


 可塑剤を使った軟質塩ビ製品は、ファッション・日用品・雑貨だけでなく、食品の容器・包装や医療用器具など幅広く使用されていることから、なおさらに安全性を確保するための取り組みが求められてきました。その中でも、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)の安全性に関する研究は半世紀以上も前から内外で多角的に行われ、その安全性が確認されています。過去に、懸念される事項として、(1)発がん性、(2)環境ホルモン性、(3)生殖への影響の3点が取り上げられたことがあります。しかし、いずれも、その後の科学的な検証によって問題がないことが明らかになってきております。本稿では、これらについてまとめて説明させていただこうと思います。

 1982年米国で、DEHPをラット、マウス(げっ歯類)に高濃度で長期間投与すると肝臓に腫瘍が発生するとの報告が出されたことにより、DEHPの発がん性が問題となりました。しかし、日米欧の可塑剤業界の連携による多角的な研究によって、DEHPのげっ歯類における肝腫瘍のメカニズムが明らかになり、このような現象は霊長類(サル)では起きないことが確認されました。これらの研究結果を受け、WHOの下部組織である国際ガン研究機関(IARC)は2000年にDEHPの発がん性評価ランクをそれまでの「2B:ヒトに対して発がん性がある可能性がある」から「3:ヒトに対する発がん性については分類できない」に変更しました。
 なお、DEHP以外の可塑剤であるフタル酸ジイソノニル(DINP)やアジピン酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHA)についても同様に、げっ歯類には発がん作用が見られても霊長類にはないという、発がん性に種差のあることがわかっています。

 1990年代後半、一部の化学物質が生物の内分泌系をかく乱するのではないかと懸念され、環境ホルモン問題として大きく取り上げられました。可塑剤工業会では、いち早く主なフタル酸エステル5種類とアジピン酸エステル5種類について、試験管レベルの試験と実際の動物を用いた試験を行い、いずれの可塑剤にも女性ホルモン様作用のないことを確認しておりました。しかし、一部の可塑剤で試験管レベルの試験でごく弱い女性ホルモン様作用が認められたとする報告があったことから、環境省は、9種類の可塑剤を「SPEED’98」の中で、「内分泌かく乱作用を有すると疑われる化学物質」としてリストアップしました。このことが、環境ホルモン問題を大きくした一因でもありましたが、その後、環境省は「SPEED’98」の取り組みの中で、詳細な試験を行い、ヒトにも生態系にも内分泌かく乱作用は認められないことを2003年発表し、この問題は収束しました。

 ラット、マウス(げっ歯類)にDEHPを高濃度で投与すると、精巣が小型化するなどの影響が起きることが知られ、特に幼若期に影響を受けやすいとされています。これに対し、可塑剤工業会は、欧米の可塑剤業界と連携して、げっ歯類ではなくよりヒトに近い霊長類のマーモセット(サルの一種)を用いた試験を行い、げっ歯類に見られる精巣への影響は霊長類の成獣では起きないこと(1997年)、同様に幼若期の霊長類でも精巣への影響が認められないこと(2003年)を確かめています。また、霊長類はげっ歯類と異なりDEHP及びその代謝物が精巣には蓄積しないなど、体内の挙動にも違いが見られることを確認しています。更に、最近のDEHPの胎児への移行性の研究によると、ラットでは母獣から胎児へ移行しやすいのに対し、マーモセットでは、移行しにくいことが判り、げっ歯類で見られた精巣・生殖毒性をそのままヒトに適用することができないとの事実が明らかにされつつあります。
 このようにDEHPの安全性は確認されていますが、EU指令では、依然として過去の情報が限られていたころのげっ歯類の生殖毒性を理由に、DEHPをCMR(発がん性、変異原性、生殖毒性)物質に分類しています。このこともあって、日本や欧州ではおもちゃなどへの使用が禁止されていますが、国が行ったDEHPの詳細リスク評価(2005年)では、「ヒトや生態系に対するリスクは懸念すべきレベルではなく、乳幼児へのリスクも考えられない」とされています。

 以上のように、フタル酸エステルについて懸念された安全性問題は解明され、専門家の間では理解が進んできていますが、それが一般に認識されるまでにはかなりの時間を必要とします。そんな中、業界では一歩一歩安全性確立のための研究や情報の発信の活動を進めているところです。(了)

可塑剤工業会のHPの「可塑剤の安全性について」のページをご参照下さい。
http://www.kasozai.gr.jp/main3/index.html

随想
シオビの時代のコミュニケーション −マーケット・インとPRの両輪で−
VEC 加地

 昔々、シオから作るんだからシオビとしたらどうか、“エンビ”にくっついたマイナスイメージから脱出できるかも、という意見を加工メーカーさんから拝聴したことがあります。

シオビって何ですか?
(エコプロダクツ展にて)
 それから10年たった昨年のエコプロダクツ展でのこと、私たちの「もっと知ろう!塩ビと地球環境」というブースに来て、シオビって何ですか?と質問してきた生徒が多かったのです。なんとエンビへのマイナスイメージはなく、ダイオキシンの説明も始めは不要、単刀直入に塩ビとは何かその良さとは何かを説明することから入っていけました。まるで真っ白なカンバスに絵を描くように、気持ちよいコミュニケーションがとれました。ただそこは短い時間のこと、描いた絵はざっくりとしたものですが、身の回りに引き付けて塩ビと環境を眺めようという触発にはなったと思いますし、劇団員の愉快な漫才がアイキャッチになり6つの環境ポイントを示した下敷きやハロッズバッグ応募、クイズも手伝って“塩ビって環境に良い”というPRになりました。展示した色とりどりのエンビ製品も、“エッ、これもエンビあれもエンビ”というサプライズとなり、認知に繋がったようです。
 逆にこちらとしては、会場に来なかった広範な“塩ビを知らない次世代”に今後どうコミュニケーションすべきか考えさせられました。

 もともと、塩ビのような素材は長いサプライチェーンを経て最終の組立産業にたどり着きます。消費者はその先です。従ってコミュニケーションの相手は、塩ビを“知っている”加工メーカー、組み立てメーカーに規格・仕様や販売方針をPRすることで事足りてきました。またステークホルダーに対してはアニュアルレポートなどでのIR広報が主体であり、CSR報告書、リクルート資料などで漸く一般消費者とのコミュニケーションが意識されます。余談ですが素材でもCI活動がありましたが、人材確保を除けばサプライチェーンを意識した内部統治が中心で、結果的には消費者対応は二の次であったと記憶します。それに比べると消費財産業のコミュニケーションはマーケッティングのひとつとして位置づけられ本格的です。PRだけでなく広告も重視されます。

 世の中には様々な素材や部品が存在しています。名前をよく知られているものもあれば、そうでないものもあります。名前を知られているものであっても、安全性や本来の機能などは十分に認識されていないことが多いでしょう。そのような状況下で、安全性の不安を煽るような報道がなされると、ネガティブなイメージだけで、アッという間に世論の追及や指弾を受けてしまうリスクがあります。その結果、消費者の信頼感は失われコミュニケーションが不足のためにイメージの回復は容易には進まず、需用減退による事業の劣化さえもたらします。塩ビ忌避がそのような推移だったと思います。やみくもに代替品を求める余り、機能・品質が劣るばかりか、実は安全性についてもしっかりとしたデータのないようなものへ転換することは社会にとっても不幸なことです。モノの良さや正しい扱い方が世の中できちんと認識されていればそのような事態は避けられるはずです。そうでなければ、使い方を誤れば火災や不完全燃焼による中毒の危険がある都市ガスが家庭で使われることはないでしょう。塩ビについても、それについての理解、認知というような基盤を作れていたら、知られていないが故の木を見て森を見ないたぐいの報道は回避できたかもしれませんし、例え一時的にダメージを受けても早い回復が可能でしょう。参考に消費財メーカーの事例ですが、お菓子や牛乳ではイメージを落としたところもありますが、石油暖房機などはむしろ情報公開の姿勢が評価されイメージアップしています。

 社会がエコロジーを志向する今、消費者とのコミュニケーションとそれに基づくPRの必要性が高まっています。一般の消費者にとって素材はどの様に映るのでしょうか。車のバンパーがプラスチックだと衝撃を吸収できそうだがリサイクルは難しそうだとか、ダッシュボードがポリプロピレンなのか塩ビなのかは分からない、ということもあるかと思います。また、消費者は素材やその機能にこだわって購入する時もありますが、包装の見映え・ブランド・陳列順、広告などが購入動機だったりもします。そこで消費者からは見えにくい地味な塩ビの場合ですが、どの分野をどう伸ばしたいかサプライチェーンに向って方向性をはっきりさせることがまずは重要かと感じます。その上で、トップ企業の商品広告がウィスキーを広めたように、塩ビサッシ以外にもシンボリックな製品がもっと開発されていけば、実需と知名度の好循環が始まると思います。
 そのためにも、省石油資源・省エネ、長寿命、リサイクル、地球温暖化防止といったこれまでの発信に加え、塩ビ製品ごとの環境特性の掘り下げが欲しい。その塩ビ製品がなぜエコなのかを、長寿命、CO排出などの切り口で製品ごとに明らかにし、LCAとしてまとめるなどもし、サプライチェーンとその先の消費者とにPRしていくことが必要と思います。

 人の意識が変わり始めている“シオビの時代”では、内外の新しいニーズに対応した新製品が必ず生まれます。モノつくりの産業に身を置く以上、川下産業から新しいニーズをもっと聴き取り、エンビの効用は何か?どんな部品に使えばCOが減らせるか?を考えるのが勝負どころではないでしょうか。このようなマーケット・インとこれに根ざしたPRが結びついて始めてコミュニケーションが好循環し、塩ビの市場も回復するように思います。(了)

お知らせ

【NEW】環境を考えた北海道の住宅づくり In 旭川 のご案内

 樹脂サイディング普及促進委員会、樹脂サッシ普及促進委員会では、下記のセミナーに参加し、講演を行います。

・日 時 :2008年2月4日(月)
 13:30〜17:00 (受付 13:00)
・場 所 :旭川市リサーチセンター・研修室
・主 催 :(株)日建新聞社
・参加費 :無料(定員:先着50名)
・お問い合わせ:(株)日建新聞社・編集部
       電話 : 011(726)3138

ENEX2008 第32回地球環境とエネルギーの調和展 出展案内

 樹脂サッシ普及促進委員会(Jmado)では、プラスチックサッシ工業会と協力し、下記の「ENEX2008」に出展致します。

[東京会場]
・日 時 :2008年1月30日(水)〜2月1日(金)
 10:00〜17:00
・場 所 :東京ビッグサイト(西3、4ホール)
・内 容 :省エネルギー・新エネルギーの総合展示会
・主 催 :財団法人 省エネルギーセンター
・入場料 :無料

・ENEX2008のホームページをご覧下さい。
 http://www.enex.info/

ハロッズバッグ・プレゼントクイズ実施中!

 塩ビに関する簡単なクイズを実施しています。
正解された方には、抽選でハロッズバッグをプレゼントいたします。
ぜひ、ご応募下さい。(締切:1月31日(木))

詳細はこちらから!!
http://www.vec.gr.jp/

編集後記
 新年を迎え、(最初だけだとは思いますが)志し高く、環境関連の本を読んでみようと思い立ちました。本を選びレジに持って行き、その本をそのまま袋に入れようとしているところを目にして、思わず「カバーをお願いします」と言ってしまいました。言うべき言葉は「袋はいりません」ですよね。『環境』の本を買っていながら、その本にカバーを掛けてもらい、結局袋にも入れてもらいました。“エコゴコロ”の偽装のようですね。本を読むより、まず行動を見直した方が良さそうです。でも!スーパーに買い物に行く時はマイバッグを持参しています。レジ袋が1枚6円なので・・・。(自称ハチドリ主婦)

VEC関連URL
●家族で学べるページ http://www.vec.gr.jp/kids_new/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー http://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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