NO.145
発行年月日:2007/09/20

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トピックス
◇アジア地域との交流 −労働安全、輸送安全、環境問題について−

随想

映画「ルワンダの涙」所感(4)

信越化学工業(株) 木下清隆

お知らせ
【NEW】安全な住環境に関するシンポジウム併催展 出展案内
PVC Newsが9/18に発行されました。
エコキュートフェア 出展案内
世界ビニルフォーラム開催の最終案内!

編集後記

トピックス
◇アジア地域との交流 −労働安全、輸送安全、環境問題について−

 ご存知のように、塩ビは石油から作られるエチレンと食塩の電気分解で得られる塩素を原料として作られるため、塩ビ業界は塩素を製造しているクロール・アルカリ業界と深いつながりを持っています。塩ビ工業・環境協会(VEC)は、業界活動の一つとして海外の協会と定期的な情報交換を行なっていることは、時々紹介していますが、8月の末、バンコクでそのクロール・アルカリ業界と合同会議が開催されました。

会場のホテルから見たバンコク市内
Stewardship Seminar 風景
 タイの人口は約6400万人、GDPの成長率は5%(2006年)ですが、塩ビの需要は年率6%で伸びているとも言われおり、最近、塩ビ業界のM&Aや塩ビ製造設備増設の話題もありました。また、塩ビ関連の日本企業が積極的に進出していることは新聞で報道されている通りです。折りしも、バンコクは雨季の終わりで、どんよりとした空が広がっていましたが、朝夕でも外気温は30度以上と蒸し暑い時期でした。一方、ホテルの中は冷房が効き過ぎるくらい効いているため、この時期の日本では着用の機会が少なくなった上着とネクタイは必須でした。とかくアジアの地域のホテルは「冷やし過ぎ」の傾向がありますが、日本のクールビズを見習って室内の温度調節に配慮してはいかがなものかと思ってしまいます。

 さて、本題に戻りますと、我々が取り組んでいる情報交換のテーマは、塩ビとクロール・アルカリ業界の労働安全や輸送安全、環境問題に関するものです。今回の会議には、約100名の参加者がありましたが、地元の企業ばかりでなく、タイ政府関係者も20名ほど集まりました。産業界が主催する講演会に多くの政府関係者が参加したり、女性の姿が多いことは、日本の化学業界の集まりではあまり見られない光景ではないかと思います。

 会議では、塩ビ業界から、欧州の塩ビ製造者協会(ECVM)と米国の塩ビ協会(VI)そしてアジア太平洋地域としてAPVNやVECがそれぞれの状況報告を行いました。一方、クロール・アルカリ業界からは、世界塩素協議会(WCC)と米国の企業さらに地元タイからそれぞれプレゼンが行われました。特に、日本からの報告では、塩ビは製造段階でのエネルギー消費量が少なく省資源材料であることから資源循環型社会に貢献する素材であることや、地球温暖化対策に貢献するとして環境省の庁舎には塩ビサッシが取り入れられていることを紹介しました。また、環境問題として、日本の塩ビ製造工場から排出されるVCMとEDCの排出削減技術を織り交ぜながら、日本の化学業界が1990年代から取り組んでいる有害大気汚染物質削減について報告した結果、講演後のコーヒーブレークの間も、地元の参加者から、質問が数多く寄せられていました。その背景には、ちょうどタイでは、日本政府の援助を受けて環境中のVOC(揮発性有機化合物)対策に取り組んでいるということがあったようです。日本の環境省に当たる部署のPollution Control Departmentの役人は、「VCM、EDC対策にも非常に参考になった」と話してくれました。

 一方、タイの産業界の取り組み事例として、塩素製品の製造業者と輸送業者がタイアップして、塩素製品のトラック輸送に関する安全教育や事故時の緊急対応を24時間体制で行っている事例が紹介され、参加者一同の熱い視線を集めていました。

 世界の関連する産業界が保有している経験や情報の共有化を図るこのような活動を、Stewardship Seminarと呼んでいますが、今回のこのような催しが、アジア地域の産業界の進展に貢献していけるものと思っています。(了)

随想
映画「ルワンダの涙」所感(4)
信越化学工業(株) 木下清隆

 【ルワンダの経済】
 地球環境問題の専門家であるレスター・ブラウンはルワンダ経済について、次のように述べている。
 「アフリカで最も人口密度の高いルワンダの経験は、土地不足が引き起こす潜在的に深刻な問題を浮き彫りにしている。1950〜1990年にかけてルワンダの人口は210万人から680万人へと3倍に増加し、その結果一人当たりの穀物作付け面積は0.03haまで落ち込んだ。90〜92年に農業環境相を努めたジェームズ・ガサナは、急激な人口増加が農地の細分化、土地劣化、森林破壊、飢餓をもたらしたとみている。こうしたストレスが民族紛争の底流となり1990年に内戦が勃発、その結果80万人が犠牲となった1994年の大量虐殺が起きた。ガサナは暴力行為は食糧供給が不十分な地域に集中していたと指摘する。」
 このレスター・ブラウンのレポートは、太陽エネルギーでしか生存を許されていない人々にとって、人口増加或いは打ち続く凶作等によって、そのエネルギーよる生産物の分配が最低限度を割ってしまうと、遂には民族淘汰が始まることを指摘している。この民族淘汰は基本的には餓死の形をとり、恨み・怨念といった感情問題とは無関係な地球そのものが持つ、生物一般に及ぶ生理現象である。地球の掟とも云えるが、この掟に人類といえども逆らえないということである。ただ、ルワンダの場合は長い間のツチ族の圧政に苦しめられていたフツ族の怨念が、これに加味されたことで、虐殺の形を取った民族淘汰が起きたということである。

 また、我国外務省の発表によれば、ルワンダ経済の主要指標は次のようになっている。
(1) GNI
21億ドル(2005年 世銀)
(2) 一人当たりGNI
230ドル(2005年 世銀)
(3) 貿易総額
輸出 105百万ドル(2005年)
輸入 364百万ドル(2005年)
(4) 主要貿易品目
輸出  コーヒー、茶、錫、タングステン、皮革
(主要相手国…インドネシア・中国・独・マレーシア・米国)
輸入 資本財、半加工品、エネルギー財、消費財
(主要相手国…ケニア・独・ベルギー・ウガンダ・フランス)
(5) 対日貿易
輸出 7百万円(コーヒー、茶)
輸入 1454百万円(バス、トラック)

 この国には、錫とタングステン以外にめぼしい地下資源はない。要するに農業国家であるが、その多くが外貨獲得のためにコーヒー園・茶園となっているとみられる。国の体裁を保ち、国家としてのインフラ整備を進めるためには金が掛かる。飛行場は必要、当然飛行機も必要、エネルギー供給、金融システム、医療体制、教育システムの整備、農業振興、産業振興等々、列挙すればきりが無い。しかしこの国にはそのような整備に回せる金など殆ど無い。そのことは大幅な輸入超過の現状が良く示している。先進諸国からの支援なくしては立ち行かない国だということである。このような状況の中では国民に潤沢な食糧の供給などは期待できない。この国に残されている選択肢は、国民の教育を進め、民力を高めて先進国の企業を誘致するくらいしかない。太陽エネルギーしか利用できない国にとって、化石エネルギーを呼び込むためには、中国が進めたような開放経済による他国の富を呼び込むしかない。この国づくりに失敗すればルワンダは、再び虐殺の悪夢が蘇ることになろう。

 【展望】
 ルワンダの抱える問題は、世界的なエネルギー分配の偏りによってもたらされているといえるが、現在の世界経済が自由貿易を標榜する限り、この問題は現在の経済スキームによってしか解決することはできない。その意味でルワンダの一層の努力が求められることになる。しかし、反対からみれば世界経済の中でその競争に負ければ、先進国といえども没落の道が待っているということである。更に化石エネルギー枯渇の時代を迎えるようになった場合、国家存立のために、どのような条件が必要となるのかは今のところ分からない。経済強国は一つの存立条件として有効ではないかと期待されるが、それも保証されているわけではない。今後展開されるであろう資源争奪戦は腕力の世界である。そうであれば軍事強国のみがその存立条件となる可能性は高い。

 そのような時代が今後数十年でやってくるはずである。そのときは、ルワンダのことなど、誰の口の端にも登らないことであろう。後進国にとって現在はモラトリアム期間である。今後数十年で経済的に自立できなければ、見捨てられる時代が来るということである。というより、先進国にその余裕がなくなるということである。資源の枯渇、特にエネルギー資源の枯渇はそれほどのダメージを世界経済に与えるということである。(了)

『映画「ルワンダの涙」所感』は、下記からご覧頂けます。

(1)【1994年の虐殺】
https://www.vec.gr.jp/mag/129/index.html#zuisou1

(2)【ツチ族政府の樹立】
https://www.vec.gr.jp/mag/134/index.html#zuisou

(3)【ルワンダ小史】
https://www.vec.gr.jp/mag/138/index.html#zuisou

お知らせ

【NEW】安全な住環境に関するシンポジウム併催展 出展案内

 樹脂サッシ普及促進委員会では、下記要領で開催されるシンポジウムに併催される、「協賛企業によるシックハウス対策向け建築材料・技術・工法展示」に出展し、塩ビサッシの紹介を行います。
 「安全な住環境に関するシンポジウム」では、シックハウスに関して化学物質だけでなく、「室内の温度差」や「結露」なども含めた研究の講演が行なわれます。

「安全な住環境に関するシンポジウム in 大阪VI」
・日 時: 2007年9月23日(日) 13:00〜17:30
  ・場 所: 四條畷市市民総合センター 市民ホール
・主 催: 特定非営利活動法人シックハウスを考える会/
安全な住環境に関する研究会
・参加費: 1人 1,000円

詳細はこちらからご覧頂けます。

PVC Newsが9/18に発行されました。

 PVC News 62号(塩化ビニル環境対策協議会)が発行されました。
目次をご紹介致します。

◇トップニュース1
塩ビ業界、「リサイクルビジョン」を発表
◇トップニュース2
  進む、タイルカーペットのエコ対策
◇視点・有識者に聞く
科学ジャーナリズムのニューウェーブ
毎日新聞科学環境部記者 元村有希子氏
◇リサイクルの現場から
使用済み塩ビ管・継手のリサイクル事業、着実に進化
◇インフォメーション
「建築系混合廃棄物の組成及び原単位調査結果」から

以上、5月に発表した「リサイクルビジョン」を中心に、塩ビ関連情報をご紹介しています。

「リサイクルビジョン」はこちらからご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/topics/new74.htm

62号の記事内容は、こちらからご覧頂けます。
http://www.pvc.or.jp/index/i_saisin.html

・PVC Newsバックナンバーは、 塩化ビニル環境対策協議会のHPよりご覧頂けます。
http://www.pvc.or.jp/

エコキュートフェア 出展案内

 オール電化は魅力だけれど、省エネも気になるし・・・。
塩ビサッシで窓を断熱すると、無駄な電気を節約できます。
エコキュート&塩ビサッシでより快適にオール電化生活を!

 樹脂サッシ普及促進委員会では、下記4ヵ所で行なわれる東北電力(株)主催の「エコキュートフェア」に出展致します。(入場無料)

【山形】、【青森】、【秋田】 (終了)
【新潟】
  ・開催日: 2007年9月19日(水)、20日(木)
・場 所: 新潟市産業振興センター 2F大・中会議室
・時 間: 10:00〜19:00(2日目17:00終了)

世界ビニルフォーラム開催の最終案内!

 世界ビニルフォーラム(World Vinyl Forum III)の開催(9月26日〜28日、ボストン)が迫ってきました。5年ごとに開催されている本フォーラムの今回のテーマは「Charting Our Future in a Sustainable Age」で、サステイナビリティ時代に向けての塩ビ製品の開発やプロモーション活動状況について、世界の塩ビ関連産業が集まり、意見交換を行います。プログラムにもあるように日本から、電化製品における塩ビ部品の使われ方やリサイクル状況について、さらに樹脂サッシを中心とした日本の塩ビ製品を巡る最近の話題をVECから報告することになっています。現在のところ、230名を超える参加登録者を数えています。
http://guest.cvent.com/EVENTS/Info/Agenda.aspx?e=e54b1463-74fc-4c18-867a-dd4856c8bebb

編集後記
 9月の半ばも過ぎたというのに、8月のような暑さが続いています。政界では安倍総理が辞任され、自民党総裁の候補者による街頭演説など熱い戦いが始まっています。この戦いが終わる今週末は、ちょうどお彼岸にあたり、昔から言われているように、暑さにも終止符を打ってもらいたいものです。(可)
 VECは、地球温暖化について日経BPなどが主催する「環境・エネルギー問題解決のための賢人会議」に協賛しました。塩ビがこの問題解決に貢献できるとの考えから進めたものです。この会議については下記URLからご覧になれます。
http://ac.nikkeibp.co.jp/eco/js2/

VEC関連URL
●家族で学べるページ https://www.vec.gr.jp/kids_new/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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