NO.131
発行年月日:2007/06/07

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トピックス
◇「リサイクルビジョン−私たちはこう考えます−」を発表

随想

ボッシュ・ホール

東京工業大学 名誉教授 久保田 宏

お知らせ
エネルギーソリューション&蓄熱フェア 2007 出展案内
時代にあった高性能・高耐久住宅は?
   =ハイクオリティな家づくりセミナーのご案内

編集後記

トピックス
◇「リサイクルビジョン−私たちはこう考えます−」を発表

リサイクルビジョン小冊子
 VECはJPEC(塩化ビニル環境対策協議会)と共同して「リサイクルビジョン—私たちはこう考えます—」をとりまとめ、5月25日に発表しました。このリサイクルビジョン策定の背景、目的と内容についてご紹介します。

 発展途上国のエネルギー・資源需要の急拡大で、石油資源の枯渇、地球温暖化が懸念されるようになった今、石油資源依存度が低くしかもリサイクル適性に優れた素材として、塩化ビニル樹脂(塩ビ)がサステイナブルな素材として再評価されつつあります。
 しかしながら塩ビのユーザーである産業界の中には塩ビの良さを十分理解しながらも、塩ビのリサイクルを懸念される方々もおられます。こうした現状のなか、塩ビについて、排出形態に応じた多様なリサイクルが進展しつつあり、様々なリサイクル設備も整備されてきたことを示し、「安心して塩ビを使っていただきたい。リサイクルシステムを更に充実させてゆきます。」という塩ビ業界の姿勢を理解していただくため、まとめたものが今回のリサイクルビジョンです。

 塩ビ業界として「こう考えます、こう進めます」という私たちの姿勢を公にしたもので、内容をまとめた総論と個別内容の具体的なデータ、事例などから成る各論から構成されています。総論では私たちの考えを3項目にまとめました。

 第一点は、塩ビが枯渇性資源の有効利用や循環型社会の形成に貢献できるサステイナブルな素材・製品を提供できるということです。重量の約6割が無尽蔵とも言えるほど大量に存在する塩を原料とする石油依存度が低い素材であるため、原料採取から生産、使用に至る間でエネルギー消費やCO排出量を少なくできます。また、長寿命の用途に使用できるため、廃棄物の発生抑制に貢献できるうえに、リサイクルし易いプラスチック素材であることを説明しました。
 第二点は、塩ビ業界、リサイクル業界、排出関係者の努力で塩ビの多様なリサイクルの仕組みや施設ができてきたということです。塩ビは幅広い用途に使われ、排出形態も様々です。関係者の長年の努力で排出形態に応じた様々なリサイクル手法が選べるようになってきました。塩ビ管や農ビでは古くからマテリアルリサイクルが進められています。各論では昨年稼動を開始した、コベルコ・ビニループ・イースト社のビニループやリファインバース社のタイルカーペット・リサイクルのような新しい技術に基づくリサイクル事業も紹介しました。
 最後は、合理的なリサイクルを更に進展させるために、塩ビ業界が今後どのような活動を進めようとしているかということです。塩ビの多様な用途と加工方法、様々な排出形態を考えますと、「多様性に応じたリサイクルシステムの構築」、「その基盤の整備」が我々の課題であると考えています。そのためには下記(1)〜(3)の3つの活動を進め、その活動結果を毎年公表します。
 (1)技術開発とリサイクルシステム育成のための資金投入
 (2)塩ビ製品ユーザーとの対話を進めるための相談窓口の開設
 (3)塩ビリサイクル品の市場拡大

 各論では、主に総論の第一点と第二点を具体的に説明しました。
 その中で、これまで塩ビ業界として余り触れてこなかった「サーマルリサイクル」についてもまとめました。全国の産廃プラスチックのサーマルリサイクル・焼却施設にアンケートをとり、塩ビ受け入れの可否を調査しました。塩ビを受け入れている施設は多数ありましたが、そのうち公表を認めていただいた69の施設名を今回公表しました。これらの施設は全国的に広く分布しており、塩ビのサーマルリサイクルは設備的にも整ってきたことがわかります。
 また、関東建設廃棄物協同組合、DOWAエコシステム(株)、VECの3者で共同試験を行い、建設系混合廃プラスチックのサーマルリサイクルが可能であることを実証できたことも説明しました。

 今回のリサイクルビジョンは、取りまとめてこれで終わりということでは決してありません。塩ビメーカー、塩ビ加工メーカーの各レベルで協働、連携して、塩ビ製品のユーザーに働きかけてゆく、今後の広範な活動の出発点と考えています。先ずは私たちの活動を具体的に実行して行くための制度や仕組みを作りあげることに取り組んでいます。読者の皆様のご理解とご支援をよろしくお願いいたします。(了)

リサイクルビジョンは、こちらからご覧いただけます。
https://www.vec.gr.jp/topics/new74.htm

随想
ボッシュ・ホール
東京工業大学 名誉教授 久保田 宏

ボッシュ・ホールを持つ
アンモニア合成反応管
 ボッシュ・ホールと言っても、何処にあるホール?そこで今、何を演じているの?などの質問を受けるかもしれない。
 1913年、ドイツ中部のライン川沿いルードウイッヒハーヘンのBASF社の工場で、世界で初めての空中窒素固定(アンモニア合成)プラントが竣工した。これによって、19世紀末、ヨーロッパ社会での人類の食糧危機に対する不安が払拭されるとともに、近代化学工業創世の基盤が作られた。この画期的な化学技術の開発を成功に導いたのが、後に、その功績により、技術者として最初にノーベル化学賞を受けたカール・ボッシュである。

 アンモニア合成反応は、300気圧で行われる。当時の炭素鋼の高圧反応管は、アンモニア合成原料ガス中の水素の分子が小さいために、鋼材料の中に浸透した水素が、鋼中の炭素と反応して、炭素脆化と呼ばれる現象を起す。結果、圧力容器の強度を低下させ、試験用の反応器は、数日間で破裂を繰り返したとのことである。この困難な問題を解決するために、ボッシュは、炭素鋼製圧力容器の内側に炭素を含まない軟鋼を内張りし、この軟鋼を通して浸透する水素を高圧容器壁に小さい孔を無数に作って容器外へ導くことで、容器材料の炭素脆化を防ぐことに成功した。これが、ボッシュ・ホールである。水素脆化を起こさない特殊鋼製の高圧容器が開発、実用化されるまでの間、この孔空きの反応管が、アンモニア生産の重要な役割を担った。化学技術史の中で有名なこのボッシュ・ホールを持った当時のアンモニア合成反応管は、今でも、BASF本社の向かいにある迎賓館前の芝生の上に、長い歴史を語るように立っている。

 ボッシュ・ホールを是非見たいと思った私は、今から、20年ほど前、大学を定年で去る直前に、国際会議参加で訪欧の途次、ルーウイッヒハーヘンのBASF本社を訪ねて、思わぬ歓迎を受け、また、翌日は、ハイデルベルヒの市営墓地にボッシュの墓を訪ね大きな感銘を受けた。
 このBASF社の訪問で、もう一つ記憶に残ったことは、このプラントは、一月前まで稼働していたよと見せられた1930年代に造られたアンモニア合成プラントであった。技術革新の激しい化学工業で、古く、間違いなく効率の悪いプラントが、50年間も使われることは、効率化を追求する日本では、とても考えられないことであった。理由を尋ねたところ、設備償却を終えたプラントは、たとえ、効率は悪くとも、使えば使うほど利益が出る。造られたアンモニアは、安水の形で、近くの農地で安価な窒素肥料として利用されていると聞いて、ドイツ人の合理性に目の覚める思いがした。

 いま、3Rの推進による循環型社会の創造が、強く求められている。この3Rの中のReduceとReuseの推進は、実は、節約の勧めなのである。資源消費のReduceのための最も有効な方法として、使えるものはできるだけ長く使うことがもう少し要請されてもよいのではないかと、私は常日頃考えている。例えば、優れた材料物性を持つ塩ビ製品は、耐久消費財として広く利用されることで大きな社会的公益が得られている。しかし、実際の使用で見ると、その使用期間は、その製品の本来の寿命よりかなり短くなっている。これは、塩ビ製品に限ったことではなく、電気製品や、自動車などの使用でも同じことが言える。耐久性を持たせる技術的改良とは裏腹に、現代社会の中での実際の使用期間は短くなっているのではなかろうか。これらの商品について、その長時間使用を義務付けるまでもないが、せめて奨励、実行を促すことで、循環型社会の推進が図られるべきではないかと考える。しかしながら、経済成長を持続して、より豊かな生活を求め、結果として市民に消費を促している現在の市場経済社会の中でのその実行は、大きな困難と矛盾を孕む課題である。
 残念ながら、私は、いま、この難しい課題を解決するための有効な具体案を持っていない。しかし、3Rの推進に多少とも関わる者として、少なくとも、何らかの方法を模索し、提案する責任はあるのではないかと考えている。(了)

お知らせ
エネルギーソリューション&蓄熱フェア 2007 出展案内

 下記の要領にて「エネルギーソリューション&蓄熱フェア  2007」が開催されます。
 塩ビ工業・環境協会、樹脂サッシ普及促進委員会、樹脂サイディング普及促進委員会にて出展します。
・日  時

:2007年6月6日(水)〜8日(金) 10:00〜17:30

・場  所 :インテックス大阪4号館
・主  催 :蓄熱フェア実行委員会
・入場料 :無料
・エネルギーソリューション&蓄熱フェア
       2007のホームページをご覧下さい。
       http://www.kepco.co.jp/chikunetsu/

時代にあった高性能・高耐久住宅は?
     =ハイクオリティな家づくりセミナーのご案内

 樹脂サイディング普及促進委員会、樹脂サッシ普及促進委員会では、下記のセミナーに参加し講演を行ないます。
セミナー後には、実際に塩ビサイディングでリフォームを行なった住宅の見学会も行う予定です。
(こちらのセミナーは、建築士会継続能力開発(CPD)制度認定プログラム(3単位)です。)

・日  時

:2007年6月18日(月)13:00〜18:00(受付12:15)

・場  所 :ビッグパレットふくしま 小会議室2,3
 福島県郡山市安積町日出山字北千保19−8
・主  催 :株式会社日本住宅新聞社
・参加費 :無料

・参加申込み締切り:6月11日(月)
       (定員70名になり次第、締切らせて頂きます。)

 ※参加希望の方は下記までお問合わせ下さい。
      株式会社日本住宅新聞社
        電話:03(3823)2511

編集後記
 ボッシュ・ホールに因んで。日本窒素肥料(現在のチッソや旭化成の前身)の創業で有名な野口遵(したがう)は、1923年にカザレ法アンモニアを世界で初めて工業化しました。硫安で農村を潤そうというだけでなく、硝化綿、ベンベルグ(キュプラ)、レーヨン、調味料など工業材料や消費財へも展開し、この壮大な意図は、日本で初めての塩ビの生産にまで及びました。工業に必要な発電、カーバイド、石灰窒素といったインフラも先立って構築しています。まさに殖産興業の巨人です。
 化学史の細目はともかく、感動忘るべからず。これを言いたく、インターネットから失敬したくだりもあるのはお許しを。(加地)

VEC関連URL
●VEC 塩ビジュニア https://www.vec.gr.jp/kids/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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