NO.127
発行年月日:2007/05/10

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トピックス
◇EU規制の新たな動き
 −食品容器包装材用添加剤リストにフタレート登録−
塩ビ食品衛生協議会 石動正和

随想

カベガミ今昔物語(3) −近代日本の夜明けと金唐革−

トキワ工業株式会社 顧問 石坂昌之
お知らせ
世界ビニルフォーラムが9月米国ボストンで開催に!

編集後記

トピックス
◇EU規制の新たな動き
 −食品容器包装材用添加剤リストにフタレート登録−
塩ビ食品衛生協議会 石動正和

 4月2日、EUは、食品容器包装材用添加剤指令(2007/19/EC)に、DEHPなど5つのフタレートを登録しました。
 今から8年前の1999年、EUは、複数のフタレートを2つのグループに分け、これらを含有するPVC製玩具と育児用品につき、それぞれ規制範囲を定め禁止する暫定措置を講じました。この措置はその後一定期間ごとに同じ内容で更新されてきましたが、2005年12月、恒久措置として定められました。この指令は、最終の2005/84/ECの第14条に書かれているごとく、まさにEUの「予防原則」を象徴するものであったと思います。

 ところで、その指令が公開されたほぼ同じ頃、EUの食品安全委員会(EFSA)は、これらフタレートについて、詳細なリスクアセスメントを行い、それぞれに安全性の指標である無有害影響量(NOAEL)を定めました。そして、これらを基に、不確実係数を100とし耐容一日摂取量(TDI)を導出、ついで平均体重と食品一日摂取量に基づき最もオーソドックスな方法に従って、特殊移行量制限(安全上認められる添加物の食品へ移行する上限値)が導出されました。今回の添加剤指令では、この制限値がそのまま採用されていることが確認できます。「予防原則」に比較し遥かに合理的で、透明性の高い科学的アプローチであると言うことが出来ます。

 EUのフタレート規制については、玩具と育児用品を対象とした禁止措置が強い印象を与え、アジアの国の中にもこれに追随する動きがあります。しかし今回EUで、フタレートが制限付ながら容器包装材用添加剤として使えるようになったということは、科学的評価結果から見て当然のこととは言え、従来の玩具と育児用品への使用禁止に比較し、注目すべき変化ではないでしょうか。

 塩ビ食品衛生協議会は、創立40周年記念事業の一環として、この添加剤指令策定に長く携わった前欧州委員会保健消費者保護総局長Dr.L.Rossiを招き、つぎの講演会を開催します。氏はこのフタレート規制についても触れると伝えていますので、多数ご参加頂きますようご案内します。

Dr.Luigi Rossi講演会
‘ Summary of EU regulations on plastics relating mainly to PVC, plasticizer and cap sealing’
日時: 6月5日(火)16:00〜17:00
場所: 如水会館1Fコンファレンスルーム(都営地下鉄東西線竹橋駅)
問い合わせ:03−5541−6901 info@jhpa.jp

随想
カベガミ今昔物語(3) −近代日本の夜明けと金唐革−
トキワ工業株式会社 顧問 石坂昌之

 現在の壁紙は前回述べた 金唐革 きんからかわ を模した和紙を基材として加工した 擬革紙 ぎかくし から始まったと云えます。擬革紙は袋物や煙草入れに加工する為の金唐革のイミテーションだったと云えますが、日本には和紙の特徴を生かし加工した工芸品が数多く生まれて居りますし、その一つと考えられます金唐革壁紙は明治初期に油紙商(竹屋)がイギリス人の鉄道技師の指導で麹町に壁紙製造所を作り、明治の輸出品とし、明治30年頃までに東京に15に近い多くの加工所が出来、明治時代の輸出産業とし発展したと云えます。これは和紙の強度特徴を生かした加工品のヒットと云えます。

旧岩崎家洋館
 明治13年大蔵省印刷局が金唐壁紙を初期の事業の副業としてスタートさせ、設備もドイツから輸入して居り、量産化を計っています。これには従来の手作業加工から工業生産に変えた事とリサーチとして明治11年頃より海外の市場調査、基礎技術の研究、当時のお雇い外人の指導も含めた準備が有ったと云われて居る事から、印刷局も輸出振興を進め擬革紙から発展させ、金唐革壁紙を効果的な輸出品に育てる意図が有ったと考えられます。
 明治19年には造家学会(日本建築学会)が創設され、洋風建築が日本に広まり出した頃ですから、壁紙に対する認識も出て来たものと考えられます。この年7月には印刷局壁紙が箱根離宮に採用されて居ります。しかし印刷局も本業へ移行と共に明治23年には壁紙製造は中止し、その設備も含め壁紙製造所主任の山路氏に払い下げました。彼は山路壁紙製造所を創業し、明治35年頃には90人近い従業員となり良質な壁紙の製造をしたと云われています。バッキンガム宮殿の一部にも使われたと云う事です。その後工業化の進展と共に明治時代からの中小加工所も大正時代に廃休業しています。山路壁紙も昭和12年には日本加工製紙に合併されました。日本加工製紙はアート紙技術を応用し高級壁紙の生産を計るも昭和20年、壁紙製造を中止し戦後に復活したが昭和23年に中止されました。

金唐紙
孫文記念館入館券
 金唐革壁紙は「金唐紙−きんからかみ」とも云われ、重要文化財の日本郵船小樽支店、呉鎮守府官舎、旧岩崎家洋館などに残って居ります。掲載写真は今年2月に当社々員が神戸孫文記念館で写したものです。又、金唐紙製作保存技術者として京都府の上田尚氏が平成17年7月に文化庁より保持者認定を受けて居ります。日本加工製紙同様アート紙設備を導入した三菱製紙も壁紙を計画(昭和初期)するも、原紙開発が長くかかり、昭和10年にヨーロッパ水準の高級壁紙の製造を開始しています。昭和17年生産を止め戦後再開したが、輸出市場に向けて国内襖紙産地から中小の専門業者も出て来た事で、昭和26年秋に製造停止しています。輸出品としての壁紙は少量多品種生産の必要性、欧州製品との競合、更に内需市場の小さい我が国では工業製品としての量産化は困難だったものと考えられます。(続く)

前回の「カベガミ今昔物語」は、下記からご覧頂けます。
カベガミ今昔物語(2)−東・西壁紙の発展と金唐革−
https://www.vec.gr.jp/mag/126/index.html#zuisou

お知らせ
世界ビニルフォーラムが9月米国ボストンで開催に!

5年ごとに開催される世界ビニルフォーラムの詳細は、VECホームページのトピックスでご覧頂けます。
 日本語版:https://www.vec.gr.jp/topics/new73.htm
 英 語版:https://www.vec.gr.jp/english/topics/070419_1.htm

編集後記
 長いと思っていてもゴールデンウィークは、あっという間に終わってしまいました。多少雨も降りましたが、初夏の陽気となり気持ちの良い日が続きましたね。皆様いかがお過ごしになりましたか。
 あるテレビ番組で「連休中にやりたい事」のアンケートを取ったら、男女共に「部屋の掃除、片付け」が1位だったそうです。私も同感し、いろいろ頑張ろうと迎えたゴールデンウィークでしたが、結果はどうだったかと言えば、『気合疲れ』してしまって、掃除はまあまあの出来でした。それでも、ゆっくり休みつつ程々に心地良い部屋となり、少しはお出かけなどもして、良い休暇となりました。(漠)

VEC関連URL
●VEC 塩ビジュニア https://www.vec.gr.jp/kids/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
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