NO.116
発行年月日:2007/02/15

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トピックス
◇「フタル酸エステル混入おもちゃ」報道の顛末

随想
伊賀上野まちあるき
塩ビ工業・環境協会 専務理事 西出徹雄
お知らせ
【NEW】建築・建材展2007 出展案内
ENEX2007 第31回地球環境とエネルギーの調和展 出展案内
【終了報告】ENEX2007 第31回地球環境とエネルギーの調和展
        [東京会場]

編集後記

トピックス
◇「フタル酸エステル混入おもちゃ」報道の顛末

 先週のメルマガに掲載いたしましたように、2月1日、玩具販売大手が中国から輸入した塩ビ製おもちゃに食品衛生法で使用が禁止されている可塑剤が入っていることがわかり、回収される騒ぎがありました。おもちゃから検出された可塑剤の量から推定すると、意図的に使われたというよりも製造段階における混入の可能性があるとみられています。いずれにせよ、基準値(0.1%)以上の禁止された可塑剤が混入することは許されず、あってはならないことです。製造メーカーにしっかりした管理を期待するとともに、何はともあれ、このたびの行政の監視体制や玩具販売大手の迅速な対応に感心した次第です。

 しかし、このニュースの報道のされ方に疑問を感じました。一部の新聞やそれを転載したネット情報では、使用が禁止されている物質名を「フタル酸ビス」と呼び、「環境ホルモンの疑いがある」とか「環境ホルモンの一種である」と紹介しているのです。これでは、食品衛生法違反のためおもちゃが回収されたことは伝わっても、物質名とその物質の特性については正確な情報となっていないと感じています。もちろん、新聞社の中には、報道発表資料に頼ることなく正確な情報を冷静に報道しているところもありました。

 今回おもちゃから検出された可塑剤は、略して「フタル酸ビス」と呼ぶことはないため、もっと正確に表記していただきたいものです。一方、化学物質の内分泌かく乱作用いわゆる環境ホルモン作用については、環境省が2005年3月に「ExTEND2005」の中で公表しているように、前述のフタル酸エステル類を含めて化学物質には、ヒト推定暴露量で内分泌かく乱作用(環境ホルモン作用)は見当たらなかったといっているのです。これが、最新の情報です。

 私たちは、業界団体のひとつの役目として、化学物質について誤った情報や一方的な情報だけの伝わり方を是正すべく広報活動を行っています。今回の件でも、早速、一部の関係者に連絡を取らせていただきましたが、マスコミ関係者にとっては行政から発表された報道資料が唯一の情報源であったようです。ニュースをいち早く伝えることの使命感を持ちながら、情報の詳細を確認することの難しさが垣間見られたような気がしました。

 1週間経った2月8日、9日の新聞には、その玩具販売大手は同一工場から輸入したおもちゃについて自主検査を行い、他のおもちゃにも禁止されているDEHPが含まれていることがわかったため、追加回収をしたとのニュースが報道されました。注意深い玩具販売大手の自主的行動には共感しますが、「環境ホルモンの疑いがあり」と規制物質に修飾語がついていたり、物質名も相変わらず「フタル酸ビス」のままの報道には失望を禁じえません。化学物質について正しく理解してもらうのは難しいことですが、私たちの情報発信やコミュニケーション不足をも痛感しました。

 インターネットが普及した今日では、情報はいくらでも検索できますが、その反面、情報の新旧や情報の真偽の区別がしにくい場合もあります。私たちは、報道関係者にも冷静な姿勢で真実を伝えていただきたいと思い、情報発信やコミュニケーションを続けています。

随想
伊賀上野まちあるき
塩ビ工業・環境協会 専務理事 西出徹雄

忍者姿でのフォーラムの様子
 伊賀上野で「地域を語り、地域を遺す」という地域興しのフォーラムが1月13日にあり、参加してきました。伊賀市と関西ネットワークシステム(KNS)の共催によるイベントです。伊賀といえばすぐに連想するのは忍者のことでしょう。今回のフォーラムでは参加者は講師も含め全員忍者衣装に着替えてという企画で、私も初めて着てみましたが、地元の方に着付けをしてもらうと、やはりそれなりに様になるものでした。自前の忍者装束がすっかり板に付いた今岡市長のご挨拶でフォーラムは始まりましたが、今回の私のテーマは「産学官民による地域振興の未来」というものでした。地域を元気づける努力が各地で知恵をしぼりながら色々と試みられていますが、かつて勤務していた中国地域の事例を中心に、地域を語る様々な試みの紹介をしました。役所や学校に任せきりになりがちな教育や文化も、サービス精神旺盛な行政とパブリックな意識に目覚めた民間や学の専門家などが結集すれば、質の高い地域発の動きになりうること、またそうした地域の様々な方たちが気軽にネットワークを作れる場作りの参考に、広島で毎月開催され2月には5年目に突入する「広島5:01クラブ」をご紹介しました。こんな話題を忍者姿でパワーポイントを使いながら話せるのも伊賀ならではのことでしょう。

 共催団体の関西ネットワークシステムは産学連携や地域活性化の活動を大阪市の扇町インキュベーションセンターを核に精力的に推進しているグループですが、先輩格の岩手ネットワークシステム(INS;いつも飲んで騒ぐ)にならい略称のKNSを「必ず飲んで騒ぐ」というだけあって、フォーラム終了後しっかり夜中過ぎまで交流の実を挙げ、結果として翌日は早起きして温泉に入るだけの余裕は無かったそうです。

俳聖殿
本町通りの古い町家
 さて、フォーラムの翌日は「町家みてあるき」の企画。さすがに忍者姿ではありませんが、市役所をスタートして、上野城、俳聖殿、(荒木又衛門の)鍵屋の辻、旧小田小学校、本町通りの古い町家を見て回る3時間半ほどのウォーキングでした。伊賀を治めていた藤堂高虎は浅井長政、豊臣秀長、最後は徳川家康に仕えたという戦国武将の中でも興味深い一人ですが、黒澤明監督の「影武者」のロケに使われたこの城には、大坂城の秀頼を意識して西側に30メートルの堅固な高石垣が築かれています。高虎は家康の信頼が厚かったせいか、外様大名で唯一人、家康の臨終に立ち会ったそうで、上野、赤坂など東京と共通の地名が残っています。お城だけでなく、城のすぐ南の町割りは江戸時代のままで、1階は繊細な格子が嵌り2階は漆喰壁に虫籠窓の古い町家が30数軒残っていて、市では「だんじりの映える景観大賞」を設けてこれらの文化遺産と景観の保存に努めてきました。

 伊賀上野は忍者と同時に、松尾芭蕉(1644−1694)の故郷でもあります。芭蕉の生涯のうち前半については多くを知られていませんが、藤堂新七郎家に仕え、主家の継子の死後28歳で江戸に出たと考えられています。その後俳諧師として成功したらしいことはわかっていますが、有名な「野ざらし紀行」から「更級紀行」、「奥の細道」までの旅に暮らしたのは40歳を超えてからの最後の10年ほどでした。
 高校の古文の授業で「奥の細道」を読まされた記憶はありますが、有名な幾つかの俳句を知った以上ではありませんでしたが、伊賀上野に行って改めて私たちにとって芭蕉とは何だろうと考えてみました。俳諧連歌の発句を独立させ俳句という文学形式を発明した人。連歌は無くなっても俳句は現代まで日本の抒情詩の主要な形式として残っています。

 「『古今集』以後見たこともない歌枕を詠む日本の抒情詩人の伝統に抗して、旅の芭蕉は、自分の眼で、日光の青葉若葉や水かさの増した最上川の流れを見、自分の耳で、遠い滝の音や「岩にしみ入る蝉の声」を聞いた。これはまさに画期的なことであり、ほとんど自然の発見というべきものである。一般に日本人が自然を好んでいたから、芭蕉が自然の風物を詠ったのではなく、彼が自然の句を作ったから、日本人が自然を好むとみずから信ずるようになったのである。」(加藤周一「日本文学史序説」文庫版上巻533ページから)

 日本人が自然を身近に感じていたことは江戸時代に始まったことではないでしょう。万葉、古今、新古今にも自然を題材にした歌は数多くありますが、時代を経るごとに様式化が進み、目の前の自然をそのまま歌に詠んでいたわけではないようで、紀貫之の歌に出てくる植物の種類がわずか6種類(桜、梅、山吹、女郎花、藤袴、菊)、鳥は2種類(鶯とホトトギス)とは驚きです。そうして見ると、芭蕉の歌に現れた自然を見る姿勢は、素直に目の前の自然を前にして、発句という形式で瞬間の印象を鋭く捉えることに集中することを通じて、感性を研ぎ澄ませたということでしょう。芭蕉による俳句を通じた自然の発見こそ、私たちが今は当然と思っている日本人の自然感を形成する元になっているのであれば、もう少し芭蕉や俳句について深く知りたい気持ちになります。地球環境、自然との共生が重視されるようになった現代にあって、私たち日本人の持っている自然に対する感覚が国際的にも意味を持つのであれば、個々の俳句の好き嫌いは別に、芭蕉の踏み出した一歩の大きさをもう一度考えてみたいと思います。

 伊賀上野に行ったことのない方は是非一度訪ねてみてください。忍者屋敷のショーを見、伊賀牛や豆腐田楽を味わい、ゆっくり温泉を楽しむこともできるでしょう。ただし、名古屋から近鉄特急で行く方は、伊勢中川駅での忍者並みに素早い乗り換えにご注意ください。

伊賀上野の観光案内
http://www.igaueno.net/
関西ネットワークシステムの活動報告
http://kns.gr.jp/modules/wordpress/

お知らせ
【NEW】建築・建材展2007 出展案内

 快適・健康・安全な住環境・商環境の実現に向けた様々な情報を発信する、建築・建材展が以下の通り開催されます。
 樹脂サッシ普及促進委員会では、社団法人日本建材・住宅整備産業協会のブース内に出展し、内窓取り付け実演を実施する予定です。

 ・日 時:2007年3月6日(火)〜3月9日(金)
      10:00〜17:00(最終日のみ16:30終了)
 ・場 所:東京ビッグサイト  東5・6ホール
      東京都江東区有明3−21−1
 ・主 催:日本経済新聞社

 ・入場料:当日一般 1,500円
      下記HPより事前登録頂くと無料となります。
      (3月5日(月)まで)
https://www.shopbiz.jp/pages/t_index.phtml?PID=0005&TCD=AC

 ・建築・建材展2007のホームページをご覧下さい。
http://www.shopbiz.jp/top/index_AC.html?PID=0003&TCD=AC


ENEX2007 第31回地球環境とエネルギーの調和展 出展案内

[大阪会場]
 ・日 時:2007年2月22日(木)〜2月24日(土)
      10:00〜17:00
 ・場 所:インテックス大阪2号館
       大阪市住之江区南港北1−5−102

 ・目 的:1.省エネルギー・新エネルギーの最新技術の紹介と、
        導入促進・機器普及のための最新情報や導入事例情報の提供
      2.生活者に対する省エネルギー意識の醸成と実践行動の動機付け
 ・主 催:財団法人 省エネルギーセンター
 ・入場料:無料
 ・プラスチックサッシ工業会に協力し、樹脂サッシ普及促進委員会
  にて出展致します。
 ・ENEX2007 ホームページをご覧下さい。
http://www.enex.info/


【終了報告】ENEX2007 第31回地球環境とエネルギーの調和展 [東京会場]

 1/31(水)〜2/2(金)の3日間、財団法人省エネルギーセンター主催のENEX2007『第31回地球環境とエネルギーの調和展』が東京ビッグサイト(西ホ−ル)にて開催されました。
 樹脂サッシ普及促進委員会とプラスチックサッシ工業会は、共同でこの催しに参加しました。塩ビサッシ窓の性能が体験できる遮音BOX・結露BOXや、実際に塩ビサッシの内窓・外窓を取付けてアルミサッシとの熱貫流率の違いを説明出来る展示を行ない、塩ビサッシの紹介をしました。
 開催中にテレビ朝日の「ワイド!スクランブル」(毎週月曜〜金曜11:25〜13:05放送)という番組からの取材があり、2/1(木)放送の情報コーナーで、約1分間「ENEX2007」と樹脂サッシ普及促進委員会のブースが取り上げられました。各種試験BOXにより、塩ビサッシの「防露性能」と「遮音性能」が映像で紹介されました。
 今年は天候も幸いし、期間中50,100人ものご来場があり大盛況でした。我々のブースにも、壁際であったのにも係らずひっきりなしにご来場者がありました。皆さんリフォームに関心が高く、特にNEDOの補助金制度を紹介すると「知らなかった、是非、利用してリフォームしてみたい」と多くの方が興味を示されました。中には「内窓を付けて生活感が変わった」と話す人もいらして、認知度はかなり浸透している印象を受けました。
 最終日、南川環境省地球環境局長がご来場され、環境省の内窓改修による室内の快適性の良さを絶賛されました。

環境省の内窓改修については、こちらからご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/topics/new58.htm

編集後記
 今週の「・・・おもちゃ」報道の顛末、は物事を正しく伝えてもらうことのむつかしさを示すと同時に、正確な報道をしてもらうために、わかりやすく事実を的確に伝えていくことの大切さを痛感させられたトピックスでした。伊賀上野、そういえば昔、“うえのまち”という西岡たかしの歌もありました。何度か訪れた“わかや”の豆腐田楽の味が懐かしく、無性に食べたくなってきました。
 それにしても暖かい冬ですね。1876年の観測開始以来、2月10日が東京の最も遅い初雪だそうですが、その日も過ぎて来週19日は24節気の「雨水」、雪が雨になる時期で、このまま雪をみることなく春を迎えそうです。地球温暖化を心配する声もありますが、それでも日差しがだんだん明るくなり、三寒四温で暖かくなるのは心が弾み、嬉しいもの。“残暑お見舞い”はあっても“残寒お見舞い”がないのも納得です。(yy)

VEC関連URL
●VEC 塩ビジュニア https://www.vec.gr.jp/kids/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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