NO.114
発行年月日:2007/02/01

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トピックス
◇NEDO1プロ−塩ビ関連物質のリスク評価

随想
塩ビ復権と組立て産業の心配(連載1/6)
国際連合大学 上野 潔
お知らせ
ENEX2007 第31回地球環境とエネルギーの調和展 出展案内
VEC HPを更新致しました。
樹脂サッシ普及促進委員会から新しいパンフレットが発行されました。

編集後記

トピックス
◇NEDO1プロ−塩ビ関連物質のリスク評価

 去る1月22日〜23日東京ビックサイトで開催された、NEDO1プロ(ネドイチプロと読む)の研究成果報告会に参加しました。NEDO1プロとは、独行法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「化学物質の総合評価管理プログラム」の第1番目のプロジェクトの略で、「化学物質のリスク評価及びリスク評価手法の開発」を目的としたものです。具体的には独行法人産業技術総合研究所化学物質リスク管理研究センター(CRM)、独行法人製品評価技術基盤機構(NITE)および(財)化学物質評価研究機構(CERI)が連携し化学物質の有害性評価、初期リスク評価、詳細リスク評価を行っているものです。
http://unit.aist.go.jp/crm/kouen_070122.htm

講演会場
ポスター会場
 今回の報告会は、2001年度から6年間にわたって行われたプロジェクトがこの3月で終了するのを期に開かれたものです。有害性評価やリスク評価の手法と評価結果の解析についての報告やワークショップ、ポスターセッションも開催され、2日間で約900名の参加者があったということです。プロジェクトリーダーである中西準子CRMセンター長は講演の中でこれまでの取り組みを振り返り、プロジェクトのスタート当初は「日本にリスク評価は合わない」と批判的に見られていたものの、“絶対逃げない”の覚悟で臨んだ仕事の結果が出始めると「もっと多くの物質についてもやって欲しい」との別の意味でのお叱りをもらうようになり、「世界が変わってきた」と述べておられました。
http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/

 本プロジェクトの成果として、PRTR指定化学物質である435物質を評価の対象とし、150物質(群)について有害性評価書と初期リスク評価書を完成させ、25物質の詳細リスク評価書を完成させました。これらの内容を6年間という短期間に仕上げたという成果もさることながら、欧米に比べ遅れがちであった日本において、リスク評価を行える人材を多数育てたということも本当に大きな成果だと思います。

 化学物質というと塩ビも何かと引き合いに出されることがありましたが、このNEDO1プロでも塩ビ樹脂や塩ビ製品に関係する化学物質も取り上げられています。塩ビモノマー(クロロエチレン)、EDC(1,2−ジクロロエタン)は塩ビ樹脂の原料ですが、それぞれ初期リスク評価書としてまとめられています。また、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DEHP)は塩ビ製品の可塑剤でありますし、重金属の鉛は一部の塩ビ製品の添加剤の構成成分でありますが、詳細リスク評価書として丸善株式会社から出版されています。それらの評価結果はホームページで確認できますが、総括的に見てこれら塩ビに関連する化学物質は、現状の暴露状況でヒトの健康に対するリスクは懸念されるレベルではないという結論になっています。

 まとめられたリスク評価書は、国の化学物質管理施策や企業の化学物質の自主管理に役立つことをNEDO1プロでは期待しています。

 化学物質の管理が、ハザードベースからリスクベースの考えに変わっていることや化学物質の代替にはトレードオフ(あるリスクを減らすことにより新たなリスクが生じてしまうこと)を考える必要があるということを広く一般の人たちにも理解していただき、えてして捉えられがちな「化学物質=危ない」とのイメージが一変されることを期待します。

関連ホームページ
CRM(独行法人 産業技術総合研究所 化学物質リスク管理研究センター)
http://unit.aist.go.jp/crm/
NITE(独行法人 製品評価技術基盤機構)
http://www.nite.go.jp/
CERI((財)化学物質評価研究機構)
http://www.cerij.or.jp/ceri_jp/index.html

塩ビモノマー(クロロエチレン)
http://www.safe.nite.go.jp/risk/files/pdf_hyoukasyo/077riskdoc.pdf
EDC(1,2−ジクロロエタン)
http://www.safe.nite.go.jp/risk/files/pdf_hyoukasyo/116riskdoc.pdf
フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DEHP)
http://unit.aist.go.jp/crm/mainmenu/1-5.html

http://unit.aist.go.jp/crm/mainmenu/1-13.html

随想
塩ビ復権と組立て産業の心配(連載1/6)
国際連合大学 上野 潔

 嵐のように吹き荒れた「塩ビ忌避」運動が漸く、科学の力で鎮まったように思います。もちろん、塩ビ業界の努力が大きかったこともそのとおりであると思います。しかし長年、組立て産業界に身を置いた技術者として考えると、まだまだ道は険しいと思います。それは、組立て産業の顧客は「一般消費者」であり、「一般消費者」はマスコミ情報や風評に影響されることが大きいからです。科学的に説明ができても、「消費者が嫌がる製品」は製造販売できないという、組立て産業には当たり前の事実があるのです。
 Webで公開されているあるNPOの製品データベースはいまだに、「塩ビの使用箇所」という項目が「特だし」にされています。幸い各社とも「あり」と記載していますが、どう見ても「有害物質」の扱いです。消費者が希望する情報を提供するのがこのNPOの姿勢ですから当然ともいえるのですが、この情報の意味を消費者は理解しているのでしょうか?まことに残念です。消費者を啓発することも科学的なNPOの役割だと思います。

 多くの組立て産業界もいまだに公式の環境行動計画の中で「塩ビ削減」「塩ビ追放」などの用語を使用し公表しています。自動車やテレビなどでは、塩ビ削減や塩ビを使用しないことを売り物にしている製品があります。環境を標榜し有名タレントを使用する世界企業ほどそういう傾向があることは嘆かわしいことです。冷蔵庫のドアパッキンや電源コード、配線材料などでは塩ビを超える性能とコストを持つ材料はなかなか見つかりません。消費者の目を恐れてひっそりと使用するのではなく、堂々と使用することが必要と思います。本当は「塩ビは環境に良い素材なので積極的に使用するが、他のプラスチックと混在しないよう明確な表示と易分解性設計を一層進めます」などの先進的な取り組みと広報が必要でしょう。ブランド品のハンドバッグが塩ビ製であることなどが、もっともっと広まると良いと思います。欧州では盛んに塩ビが使用されていることを知らせることも必要です。

 ただし、塩ビ業界も安心してはいけません。これまで以上に分別回収や適正な処理条件についての啓発と情報公開努力が必要です。素材産業は直接消費者とは接していないけれど、顧客である組み立て産業は日夜必死で、消費者獲得の競争をしていることを忘れてはいけません。一時期広がった発泡スチロールに対する使用忌避運動に対する発泡スチロール業界の啓発活動とリサイクルに関する努力を、これからも謙虚に見習う必要があると思います。

 実はもう一つ心配な点があります。いったん起きた日本の塩ビ忌避の動きが、アジアを中心に飛び火したまま根付いていることです。「塩ビは燃すと猛毒のダイオキシンが出ることが判明したから」との声がアジアの環境学者から聞こえるのです。それも日本から環境問題を学んだ善意のグループや日本の過去の著作物を読んだ学者に多いのです。環境情報に限らず一度広まった情報は、なかなか訂正されません。
 思い込んだ人々はそれが信念になり、容易に行動を変えません。塩ビ業界は科学的なデータを総動員して、アジアの環境学者や地域のリーダーに対して啓発活動を進める必要があります。日本に招く、現地を訪問する、英文メルマガを発信する。いろいろな方法が浮かびます。

 その意味でも、昨年3月に韓国塩ビ環境協会(略称KOVEC)が設立されたことは大変喜ばしいことです。日本と並ぶアジアの先進国でOECD加盟国でもある韓国は、電気電子・自動車などの組み立て産業で日本の強力なライバルでもありますが、塩ビに関する環境学者、行政への働きかけは重要です。VECの活動がアジア諸国に対してもっともっと向けられることを希望します。

お知らせ
ENEX2007 第31回地球環境とエネルギーの調和展 出展案内

[東京会場]
 ・日 時:2007年1月31日(水)〜2月2日(金)
      10:00〜17:00
 ・場 所:東京ビッグサイト(西3、4ホール)
       東京都江東区有明3−21−1

[大阪会場]
 ・日 時:2007年2月22日(木)〜2月24日(土)
      10:00〜17:00
 ・場 所:インテックス大阪2号館
       大阪市住之江区南港北1−5−102

 ・目 的:1.省エネルギー・新エネルギーの最新技術の紹介と、
        導入促進・機器普及のための最新情報や導入事例情報の提供
      2.生活者に対する省エネルギー意識の醸成と実践行動の動機付け
 ・主 催:財団法人 省エネルギーセンター
 ・入場料:無料
 ・プラスチックサッシ工業会に協力し、樹脂サッシ普及促進委員会
  にて出展致します。
 ・ENEX2007 ホームページをご覧下さい。
http://www.enex.info/

VEC HPを更新致しました。

「塩ビニュースレター」Vol.4(1月10日発行)を掲載しました。

Vol.4は、「塩ビサッシ」に注目しました。
全文は、こちらからご覧頂けます。
http://www.vec.gr.jp/news_letter/index.html

樹脂サッシ普及促進委員会から新しいパンフレットが発行されました。

『快適窓学−最新情報編(1)』と題するパンフレットが発行されました。
塩ビサッシの高断熱性・高気密性が浸透し、様々な所で評価・採用されている実例を、豊富な写真で分かりやすくお伝え致します。

case 1.環境省庁舎ビルに採用。
case 2.マンション環境性能表示制度でオール三ツ星を獲得。
case 3.総戸数1,095戸の芝浦に建つタワーマンションに採用される。

ご希望の方は、樹脂サッシ普及促進委員会のHPの資料請求よりお申込み下さい。(こちらのアドレスです。)
http://www.jmado.jp/katalog.html

編集後記
 No.112号をご覧になった読者から、メールをいただきました。塩ビペーストレジンプラスチゾルのディッピング加工メーカーとして、家電、電気メーカーと主に取引されているそうですが、取引先からは塩ビに対する風当たりが強く苦戦されている方です。その方は、先日のNHKの番組「クイズ日本の顔」を見て感動し、これからも塩ビの良さを地道にアピールしていきたいと思われたそうです。なぜならその番組では、汚れが落ちやすいなどの理由から柔道用の畳表に塩ビが使われていることを“平成の三四郎”ことバルセロナ五輪金メダリストの古賀さんが話されたり、老人介護施設の病室の畳材としても非常に優れた材料として塩ビが使われていることが紹介されたからです。
 塩ビの良さや冷静な情報が紹介されることで勇気付けられる多くの加工メーカーの方々のためにも、役立つ情報や明るい話題を提供していかなければならないと思っております。(HI)

「クイズ日本の顔」のホームページはこちらからご覧頂けます。
http://www.nhk.or.jp/kao/backnumber/070116.html

VEC関連URL
●VEC 塩ビジュニア http://www.vec.gr.jp/kids/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー http://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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