NO.112
発行年月日:2007/01/18

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トピックス
◇サステイナブル社会へ向けて
塩ビ工業・環境協会 専務理事 西出徹雄

随想
古代ヤマトの遠景(14)—【大和と出雲】—
信越化学工業(株) 木下清隆
お知らせ
ENEX2007 第31回地球環境とエネルギーの調和展 出展案内

編集後記

トピックス
◇サステイナブル社会へ向けて

塩ビ工業・環境協会 専務理事 西出徹雄

 先週号の土屋会長の年頭挨拶でご覧いただいたとおり、昨年一年を振り返ってみますと、塩ビを取り巻く環境もかなり変化してきたように感じられます。若干重複になるかもしれませんが、一連の動きをもう一度振り返ってみたいと思います。

 新聞やテレビ等のマスメディアに取り上げられた塩ビ関連のニュースは、従来の塩ビ忌避的な内容のものはほとんどなくなり、塩ビの新しい用途や塩ビ樹脂サッシに関するものが大勢を占めるようになりました。背景として、従来からのダイオキシン問題や環境ホルモン問題について塩ビを問題視する根拠がなくなってきたことが一番の理由でしょうが、加えて原油高の基調の下で塩ビの良さの見直しを先行させていた欧州などの動きがようやく日本にも及んできたことが上げられます。
 また、このような状況変化の中で、国土交通省の「建築設備設計基準」も平成18年度版(従前の基準は平成14年度版)からはダイオキシンやエコ電線の説明がはずされ塩ビを差別する扱いがなくなりました。むしろリサイクルしやすく、素材として元々難燃性に優れ、加工性のよい塩ビは循環型社会を支える材料として積極的に認識してもらおうとする動きが欧米でも活発になりつつあります。
 問題は、塩ビの話題がマスメディアに取り上げられないために、リサイクルの新しい技術や製品についての動向が塩ビ製品のユーザー企業に認識されないままになり、塩ビ製品が排除される動きがまだ残っていることです。当協会では、これまでも様々な形で情報発信を続けてまいりましたが、更に力を入れる必要性を感じています。塩ビ製品を作る関連加工業界との連携協力関係を一層緊密にしてまいりたいと思います。

コベルコ・ビニループ・イースト千葉工場
 リサイクル関係では、昨年夏からビニループ法という溶媒により塩ビを選択的に溶かし分ける方法によるマテリアルリサイクルシステムが千葉県の富津で事業化され稼働を始めています。またセメント原燃料化や重金属の回収と組み合わせた塩化揮発法などこれまでとは違った新しいリサイクル技術も登場しつつあります。
 このためサーマルリサイクル施設などを含め、廃塩ビ製品を埋め立てではなく、適正に処理またはリサイクルできる全国の施設を広く知っていただけるよう調査を進めているところです。多くの方が思っていらっしゃる以上に、廃塩ビ製品や塩ビ含有廃棄物を受け入れられる施設が整備されてきていますので、その実態を広くご理解いただけるよう情報をとりまとめる予定です。

環境省に設置した塩ビ内窓
 塩ビ樹脂サッシもその優れた断熱性能、遮音性能、結露防止効果などが広く知られるようになってきました。これから本格化する民生部門での地球温暖化対策にも積極的に貢献したいと考えています。既に国においても従来からの樹脂サッシ設置に対する補助金を19年度には倍増させることを12月にまとまった政府予算案に資源エネルギー庁からは盛り込み済みです。また環境省では庁舎の一部に塩ビ内窓を設置して、この冬の無暖房に対応しており、更に各地方事務所等への設置も進める方針とのことです。
 国内でのエネルギー消費の中でも民生部門と運輸部門の増加率は極めて高く、2008年には京都議定書の第一約束期間が始まるのを控えて、政府では京都議定書目的達成計画の見直し作業にとりかかったところですが、住宅やビルの開口部の断熱化はすぐにも取り組める内容であり、我慢を強いる省エネではなく、居住環境の快適性、保健性を高めながら省エネも実現できる優れものです。住宅やビルのストック全体の大きさを考えるとトータルの削減効果も大きいため、今後の対策強化の議論の中でも大いに注目されることを期待しています。

 急速に経済規模の拡大を続けているBRICsの国々との関係も益々重要になっていきますが、昨年は4月に北京で環境安全問題についてのシンポジウム、10月にはサンクトペテルブルクで世界塩ビ会議(GVC)、11月にインドのムンバイでアジア太平洋ビニルネットワーク(APVN)の総会を開催し、各国との連携を深めてきました。これらの会議やセミナーを通じて、それぞれの国内でも塩ビ関係者による組織化が進む様相になってきました。日本としてもグローバル化が一段と進む中で、海外の関係者との連携を更に強化するとともに、ユーザー産業や消費者の理解を得ることが益々重要となっています。
 サステイナブルな材料としての塩ビ樹脂を理解していただけるよう消費者や行政との対話も深化させながら、サイステイナブルな社会を支える塩ビ産業の確立に向け、本年の努力を続けてまいりたいと考えております。これまでにも増して皆様のご支援ご協力を宜しくお願いいたします。

土屋会長の年頭挨拶は、こちらからご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/111/index.html#topics

随想
古代ヤマトの遠景(14)—【大和と出雲】—
信越化学工業(株) 木下清隆

 出雲と倭王家との間には何か関係があることを前回簡単に触れたが、今回は、大和における出雲の影を追ってみることにする。

 結論から先に云うと大和にも出雲の影は色濃く残されている。八世紀になると律令体制が整備されてくるが、この時代、出雲の国造は代替わりの度に朝廷に挨拶に出向くのが、しきたりとなっていた。このことは出雲だけに義務づけられていたが、見方を替えれば出雲だけの特権だったとも云える。そして、朝廷で出雲国造は神賀詞(かむよごと)を奏上するのが慣例となっていた。この神賀詞の中に次のようなことが述べられている。
「大和の国は皇孫が都されるところですが、大穴持命(おおなもちのみこと)は自分の和魂(にぎたま)を八咫鏡に託(つ)けて、大物主櫛ミカ玉命(おおものぬしくしみかたまのみこと)と名付け、三輪山に鎮座しておられます。また、御子、阿遅須伎高孫根命(あじすきたかひこねのみこと)の御魂を葛城の鴨神社に鎮まらせ、事代(ことしろ)主命の御魂を宇奈提(うなで)に鎮まらせ、賀夜奈流美(かやなるみ)命の御魂を飛鳥に鎮まらせて皇孫を近くから守護させておられます。そして、ご自身は杵築宮に鎮座しておられます。」

 以上の内容は相当に噛み砕いたものであるが、それでも簡単には理解できない代物である。ここに出てくる大穴持命とは書紀では大己貴命といわれており、古事記では大国主命と呼ばれている。このように幾つもの名を持つ出雲の神であるが、ここでは神賀詞に従い、大穴持命で通すことにする。
 出雲の国譲りは、記紀の世界ではこの大穴持命が高天原の神々に対して、行ったことになっている。その大穴持命は、自分の和魂(優しい一面を表す魂のことで、対語は荒魂)に「大物主櫛ミカ玉命」と名つけて、大和の三輪山に鎮座させ、国譲りした相手の高天原の流れをくむ天皇家をお守しますと云っているのである。更に自分の子供達である阿遅須伎高孫根命、或いは事代主命達も大和の守りにつかせるために天皇家に奉りますとも述べている。そして、大穴持命の御魂の本体は杵築宮、即ち出雲大社に鎮座しております、と云っている。

 国譲りした出雲の神々が、何のために大和の地を守ろうとするのか不思議であるし、そのような出雲国造の誓いの言葉を、その代替わり毎に述べさせていた朝廷の態度そのものも、理解に苦しむところである。この裏には何かがある、と考えたくなる神賀詞の内容である。

高鴨神社
 ここに出てくる阿遅須伎高孫根命は現在でも、葛城地方の南、金剛山の東麓にある「高鴨神社」に祀られている。また、事代主命については、宇奈提との関係は不明であるが、この命は現在、御所(ごぜ)市の鴨都波(かもつば)神社の祭神として祀られている。最後の賀夜奈流美命(かやなるみのみこと)については、この命を祀る神社が存在していたことについては記録に残されているが、現在は所在地不明となっている。

 このように神賀詞の一部ではあるが、その内容を読み解いてみると、皇室と出雲との関係が想像以上に緊密であることが分かる。出雲の痕跡はしっかりと大和に刻まれているのである。神賀詞に書かれている内容が、千三百年経った今日においても未だ生きているのは驚くべきことである。

 高鴨神社の祭神について補足的に説明しておくと、神賀詞では阿遅須伎高孫根命と述べられているが、本来の祭神は神魂神(かもすのかみ)であると考えられる。この神は恐らく3世紀末頃から高鴨神として祀られていたとみられるが、この高鴨神は五世紀後葉に、時の雄略天皇によって高知へ追放された。その理由は明確ではないが、経緯は『続日本紀』に記されている。追放後、新たに阿遅須伎高孫根命が祀られるようになったらしい。ところが追放された高鴨神は八世紀になって呼び戻されている。従って、この神社には、高鴨神と阿遅須伎高孫根命の二柱が祀られていることになる。神賀詞が奏上されていた時代は阿遅須伎高孫根命だけが祀られていたから、出雲国造はそのように述べたということであろう。現在、この神社の祭神は高鴨阿遅須伎高孫根命となっており、多くの人々からは一柱の神が祭祀されていると理解されているようだ。しかし、本当は二柱である。

 神魂神が葛城の里から追われたとき、賀茂氏は土佐に向かった一族と、最終的に山城の地に移り住んだ一族とに別れたとみられる。そして、後者の一族が現在の上賀茂神社を創建したと考えられている。このような想定が正しいとするなら、上賀茂神社も出雲系の神社ということになる。(続く)

前回の「古代ヤマトの遠景」は、下記からご覧頂けます。
古代ヤマトの遠景(13)・・・【建王物語】

上記以前の「古代ヤマトの遠景」のバックナンバーは、以下のアドレスからご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

お知らせ
ENEX2007 第31回地球環境とエネルギーの調和展 出展案内

[東京会場]
 ・日 時:2007年1月31日(水)〜2月2日(金)
      10:00〜17:00
 ・場 所:東京ビッグサイト(西3、4ホール)
       東京都江東区有明3−21−1

[大阪会場]
 ・日 時:2007年2月22日(木)〜2月24日(土)
      10:00〜17:00
 ・場 所:インテックス大阪2号館
       大阪市住之江区南港北1−5−102

 ・目 的:1.省エネルギー・新エネルギーの最新技術の紹介と、
        導入促進・機器普及のための最新情報や導入事例情報の提供
      2.生活者に対する省エネルギー意識の醸成と実践行動の動機付け
 ・主 催:財団法人 省エネルギーセンター
 ・入場料:無料
 ・プラスチックサッシ工業会に協力し、樹脂サッシ普及促進委員会
  にて出展致します。
 ・ENEX2007 ホームページをご覧下さい。
http://www.enex.info/

編集後記
 メルマガ読者の皆さん、こんにちは。メルマガのVEC事務局担当の一人です。
 11日(木)にVEC賀詞交歓会が開催されました。行政、市民団体、マスコミ、企業等の関係者約350名の方であふれんばかりの盛況でした。今年は需要回復を目指し、チャレンジングに塩ビの有用性をアピールしたいという土屋会長の力強い挨拶がありました。次いで、経産省製造産業局照井次長のご挨拶、大西副会長の発声で乾杯、その後歓談に入りました。年始の挨拶あるいは情報交換の場として、会場のあちこちで話の輪が弾んでいました。
 市場開拓の目玉である塩ビサッシと塩ビサイディングの展示コーナーもにぎわっていました。参加者一同、塩ビ業界の発展を目指し、決意を新たにしたひと時でした。(Hn)

VECホームページのトピックスに賀詞交歓会の様子を掲載致しました。こちらからご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/topics/index.html

VEC関連URL
●VEC 塩ビジュニア https://www.vec.gr.jp/kids/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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