NEW VEC MAGAZINE Vol.11
発行年月日:2003/11/27



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コラム
「有機塩素化合物の名称について思う」
塩ビ工業・環境協会 柳 良夫
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コラム
「有機塩素化合物の名称について思う」
塩ビ工業・環境協会 柳 良夫
1)モノマーか?ポリマーか?
 すこし前のことですが、塩化ビニルモノマーが塩化ビニル樹脂(ポリ塩化ビニル)と混同され、塩化ビニル樹脂や製品があたかも発ガン性を持ってるかのように報じられ、困惑され、憤りを感じられた方も多いと思います。
 合成樹脂(プラスチック)は高分子化合物の一種で、低分子化合物(モノマー)が多数繰り返し繋がった重合物(ポリマー)であり、モノマーとポリマーが全く異なる物質であることを説明しないと、多くの読者に誤った情報を流すことになります。特に塩化ビニル樹脂は、汎用樹脂の中で最も長い歴史をもつ素材であり、例えば「ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリスチレンなどの汎用樹脂は、………」のように塩ビ樹脂だけは重合物であることを示す“ポリ”をつけずに記述されることが多く、誤解されやすい事情があります。
 塩化ビニル樹脂の原料であるモノマーは常温、常圧では気体(沸点−14℃)であり、重合物である樹脂は固体であり、この2つは全く別の物質です。原料は塩化ビニルモノマー(vinyl chloride VCM)のようにモノマーを、重合物はポリ塩化ビニル(poly vinyl chloride PVC)、塩ビ樹脂のようにポリ、樹脂をそれぞれきちんと記述し、区別する必要があります。情報発信されるメデイアの方はこの点を理解され、それがはっきり読者に伝わるよう明記していただきたいし、私共、業界に身をおく者も、わかりきった事と端折らず、その都度説明をする努力が必要です。

2)塩化か?クロロか?塩素化か?
 官能基が水素と置き換わる事で多様な有機化合物群が形づくられます。特に水素が塩素と置き換わり、C−Cl結合を有する化合物を有機塩素化合物と呼んでいますが、この化合物群に対する命名の考え方は2つに分類されます。
 1.置換型命名法
 ひとつは有機化合物の“水素が塩素に置き換わった”とする考え方であり、置換型命名法と呼べます。この命名法では、英名は置換される化合物の前に塩素を表すchloroを接頭辞として一塊りで表記され、日本語では「クロロ***」と片仮名で表記されます。(***は化合物名) 
 「モノクロロメタンmonochloromethane」、「ジクロロメタンdichloromethane」、「ジクロロエタンdichloroethane」、「クロロベンゼンchlorobenzen」のようにメタン、エタン、ベンゼンの塩素置換体として命名され、塩化ビニルモノマーもこの命名法を適用すればクロロエチレンとなります。
 塩素置換されているという意味で、「塩素化」という用語を使っている例があります。chlorinatedの訳だと思いますが、塩素化パラフィンとか塩素化塩ビ樹脂といった不特定多数の水素が塩素に置換されたと解釈すべきで、個々の化合物の命名に使うのは用いるのはどうかと思います。
 2.付加型命名法
 もうひとつは、官能基(有機化合物の水素がとれた残り)に“塩素が付加した”とする考え方で、二官能性の官能基の場合は、結合手同士が再結合して生成した“不飽和化合物に塩素が付加した”とする考え方で付加型命名と呼べます。英名では塩素部分はchlorideで、2つの官能基名は置換命名法のように一塊りではなく切り離して表記され、和名では「塩化***」とされます。(***は官能基名)
「塩化メチル methyl chloride」「塩化メチレン methylen chloride」「二塩化エチレン ethylene dichloride」「塩化フェニル phenyl chloride」のように官能基或いは不飽和化合物への塩素の付加体として命名されます。塩化ビニルモノマーの塩化ビニルという名称もビニル基という官能基と塩素の付加体として命名された付加型命名ということになります。

 1.の置換型命名では置換前後の化合物は同族体であり、不飽和化合物が飽和化合物になったり芳香族化合物(ベンゼン)が脂環式化合物(シクロヘキサン類)になったりすることは有り得ません。また2.の付加型命名では「塩化***」の***の部分は化合物ではなく、官能基の名称です。
 ところが最近、上で述べた置換型及び付加型命名の考え方に則らずに両方を混同した命名法が散見され、もとの英名は明らかに置換型命名であるのに日本語では付加型命名にしているケースが頻繁に登場し気になります。幾つかの例を以下に挙げます。

テフロンのモノマーを「ポリ四弗化エチレン」と命名(エチレンに4つも弗素が付加すると炭素は5価となってしまいます。)
「テトラフルオロエチレン」と呼ぶべきです。エチレンに弗素が4原子付加したのではなく、水素が4つ弗素に置き換わったのですから。
ダイオキシンの毒性係数の標準異性体である2,3,7,8−TCDD、2,3,7,8−TCDFを「2,3,7,8−四塩化ジベンゾダイオキシン」、「2,3,7,8−四塩化ジベンゾフラン」と命名
「2,3,7,8−テトラクロロジベンゾダイオキシン」、「2,3,7,8−テトラクロロジベンゾフラン」と置換型命名で呼ぶべきです。ジベンゾダイオキシンの2,3,7,8位の水素が塩素と置換したのであり、芳香環に塩素が付加したのではないのですから。
PCBを「ポリ塩化ビフェニル」と命名
「ポリクロロビフェニル」と置換型で呼ぶべきです。ビフェニル(これは官能基名ではなく、れっきとした化合物名)の水素の多くが塩素と置き換わったのであり、ビフェニルの芳香環に塩素が付加したのではないのですから。英名ではbiphenyl polychlorideではなく、polychlorobiphenyl (或いはpolychlorinated biphenylこの場合polychlorinatedは形容詞的に使われている)となっているはずです。

 今月のコラムは何だか重箱の隅をつっつくような面白くない話題だったかもしれませんが、「2,3,7,8−四塩化ジベンゾダイオキシン」や「ポリ塩化ビフェニル」といったおかしな名称が市民権を得つつあるのをみていると、化学の先生方は何もおっしゃらないのかな?今の大学ではそんなこと余りやかましく言わなくなったのかな?と思い、こうした命名法を厳しくいわれた先生を懐かしく思う世代として、ひとこと言いたくなったというわけです。そう言えば、この「ポリ塩化ビフェニル」なる名称、「ポリ塩化ビニル」と酷似しており、一般消費者からみれば同じにみえることでしょう。有用素材の塩ビ樹脂と有害物質のPCBとが混同されては大変と、ついあらぬ心配をしてしまいます。そうした心配の種をなくすためにも正しい命名法に則って、PCBの和名は「ポリ塩化ビフェニル」ではなく「ポリクロロビフェニル」を使ってほしいものです。

生活バンク・FPの部屋

ファイナンシャルプランナ−(略FP)、長谷部和子
どうなる年金・どうする老後『これらに金融商品で対処できるか!』

年金制度の課題 ・少子高齢化による若い世代の負担増

・積立金の運用成績の悪化

今後の動向で注目されるポイント

・保険料率のアップ

・給付額の引き下げ

・給付年齢の引き上げ

定年になっても年金がもらえない?空白の5年間

老齢年金の支給開始年齢は原則65歳になります。

5年間の生活費が仮に月25万円とすると年間300万円。5年で1,500万円


1)金融商品のうち、安全性を外資系生命保険金で考えてみましょう。
例)

60歳男性

・退職金約1510万円積立利率変動型終身保険に加入(最低保証2%)

死亡保険給付金2000万円 払込み期間5年 全期前納 終身保険

66歳時

解約返戻金(2%運用時1518万円・4%運用時1592万円)

これまでの預貯金を5年間取り崩して生活費に充当しても、5年以上経過した後保険を解約すれば元金より預貯金は増加する。ここでまだ金銭的にゆとりがある場合解約を先延ばしし元金を増加させる事ができる。

解約しないでお金を使う方法として、元金の90%までは借り入れられます。
この借入金は元利とも返済をしなくてもOKで、最終的に死亡時に借入金を差し引いて、残金が保険金として戻ってきます。


金融商品として生命保険を考えてみると、死亡時保険と預貯金としての安全性利便性の両方を備えていることが判ります。
読者便り
Q: バイクのカウル(風防)をドライヤーを使って硬質塩ビでつくりたいのですが、以下をお尋ねします。(名古屋、Cさん、高校理科教諭)

1) 硬質塩ビ製品と軟質塩ビ製品の素材的な違いはなんでしょうか

A:  塩化ビニル樹脂(PVC)製の軟質製品と硬質製品の違いは可塑剤を含むかどうかです。PVCは元来、硬質です。PVCの分子同志が高い密度になって、強く寄り集まっていて、少々の力では変形し難い状態のものです。一方で、PVCと分子レベルで極限まで混ざり合う有機化合物があります。この様な化合物は、PVCに混合すると寄り集まっていたPVCの分子と分子の間に入り込み、PVCの分子が動きやすくなります。
その結果、弱い力でも変形出来るようになります。この状態が軟質材の様子で、この様なPVCに混ざり込む有機化合物を可塑剤と言います。

2) 硬質塩ビ製品の軟化温度は何度くらいですか?ドライヤーで加工したいのです。

A: 1. 硬質PVCの軟化温度は測定方法で種々の値があります。風防をつくるときの熱加工のことを考えると、熱変形温度と言う指標が適切です。幅1/2インチ、厚み1/4インチの角棒に18.6kg/cm2の曲げ荷重をかけたサンプルが何℃で規定の変形をするかを示すもので、60〜76℃近辺にあります。通常の透明な硬質PVC板は60℃台と考えて差し支えありません。無機化合物をより沢山添加したものは更に高い熱変形温度になります。
 なお軟質塩ビ製品の場合は常温でも柔らかいということは、その熱変形温度が常温よりもかなり低い温度だということを示しています。
2. 時速50kmでも風速は14m/秒とかなりの強風になりますので、厚みのある塩ビ板を使用すべきでしょうが、ヘアードライヤー程度では熱量が足りません。また、カウルのような大きなものを均等に曲げるのはなかなか難しいものです。さらに球面の様な曲げ変形をさせると場所により変形の程度が違って厚みムラが出来、カウルから見る景色の像がゆがみます。かといって、加熱金型の中に挟んで均一に厚みを出すのは装置と費用がかかります。
塩ビ板メーカーに連絡をとってみますので、暫くおまちください。

☆読者便りは、VECホームページのお問い合わせから構成されています。
 ご意見・ご質問をお待ちしております。

お知らせ
事務所移転について

11月10日(月)より下記住所に移転いたしました。

〒104-0033 東京都中央区新川1−4−1 六甲ビル8F

TEL 03-3297-5601 FAX 03-3297-5783


セミナー

慶応大学 公開セミナー(第2回)

日 時

2003年12月6日(土)

13:30〜16:30

テーマ

プラスチックを使いこなす知恵

講師

慶應義塾大学・理工学部・工学博士・川口 春馬教授

テーマ

プラスチックの概要(性質・用途・リサイクル)

講師

信越化学工業株式会社・社長室・木下 清隆氏
詳細及び次回の予定は、以下のアドレスでご覧いただけます。

http://www.temusu.com/keio/


展示会

「地球と私のためのエコスタイルフェア〜エコプロダクツ2003」

日 時 2003年12月11日(木)〜13日(土)
10:00〜17:00

場 所 東京ビッグサイト東展示場1・2・3ホール
VEC関連URL
●VEC 塩ビジュニア https://www.vec.gr.jp/kids/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●プラスチック・サイディング http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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VEC VYNYL ENVIRONMENTAL COUNCIL
塩ビ工業・環境協会

■東京都中央区新川1-4-1
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