NO.088
発行年月日:2006/07/20

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トピックス
◇教室の窓にも塩ビサッシを使おう!
全国の「エコフロー事業」で期せずして声挙がる

随想 
考えることを考える(2):科学者の思考過程

某技術センター職員 遠藤勲

お知らせ
【NEW】東京おもちゃショー 2006 開催報告
これからの快適な住まい作りセミナー・諏訪セミナーのご案内
エネルギーソリューション&蓄熱フェア’06 出展案内

編集後記

トピックス
◇教室の窓にも塩ビサッシを使おう!

全国の「エコフロー事業」で期せずして声挙がる


 「エコフロー事業」という言葉をご存知でしょうか。これは、民生部門での温暖化対策の一つとして、同時に子供達の身近な環境教育の一つとして、学校の校舎の改修プロセスを、教材としての活用もしながら考えていこうというもので、環境省が進めている「学校エコ改修と環境教育」事業の愛称です。
 具体的には、17年度に全国の小・中学校から10校のモデル校を選び、それぞれの学校の先生たちや地域の教育委員会のかたがた、加えて設計事務所や関連企業のメンバーなどの参加を募って研究会を組織し、関係者の総智を集めて、学校のエコ改修案を立案し始めているのです。

長野県 高森南小学校
東京都 峡田小学校
学校エコ改修 研究会
 建材を主要な用途としている私たち塩ビ業界としては、こういった事業に必ずや有意義な貢献ができると考え、樹脂サッシ普及促進委員会を通じてこの事業に参加することとしました。そこで17年度のモデル校のうち、長野県下伊那郡高森町立高森南小学校と、東京都荒川区立第7峡田小学校のケースに担当者を派遣し、検討に参画してきました。

 両校ともそれぞれ研究会が組織され、高森南小学校は100人以上のメンバーで計6回、峡田小学校でも50人程度のメンバーで7回の会合を積み重ねました。講師を招いての勉強会に始まり、実地調査と改善のアイデア出し、出たアイデアの評価と総合化などの議論を通じて、メンバーの知識レベルが高まるとともにお互いの共同意識も出てきました。そしてその結果、最近になって両校とも「学校エコ改修の基本構想案」がまとまりました。

 高森南小では長野の特長を生かした地域産木材の活用や広い用地を使ったビオトープの設置、それに建物の断熱性能強化などが目玉になり、峡田小の場合は近くを流れる隅田川を利用した水や川風の活用、ヒートアイランド現象対策も含めた緑化の強化、建物の再配置や断熱化などがメインということで、期せずして両校とも、夏涼しく冬暖かい教室環境作りのために複層ガラス・塩ビサッシシステムを適用しよう、という案になりました。

 これらの構想は今後詳細を詰めて設計コンペにかけ、18年度中に決定して19年度中に改修工事を実施するスケジュールだそうですが、いずれにせよ、塩ビサッシの有効性が認められ、採用される運びになるのでは、と期待が寄せられています。さらに残る8校のケースでも同様に断熱化=塩ビサッシ採用、という動きが出てきて欲しいものです。

 日本の小・中学校は、児童数が多かった高度成長期に建設した校舎がそろそろ建替え時期にきていますが、財政問題からなかなか建替えの計画が立たない自治体が多いそうです。しかし、もし建替えを考えるならば、断熱設備もなく劣悪な学習環境から脱皮させ、省エネルギーや温暖化対策などを充分考慮するとともにその社会的意義を児童・生徒や関係者によく認識させ、社会全体の環境意識向上にも役立たせられる、「エコスクール」を目指すべきだ、と私たちも考えます。

 「エコスクール」を全国に広めるこの「エコフロー事業」に私たちも協力する所存です。

「エコフロー事業」についてお知りになりたい方は、こちらをご覧下さい。
(環境省 学校エコ改修と環境教育事業)
http://www.ecoflow.jp/

随想

考えることを考える(2):科学者の思考過程

某技術センター職員 遠藤勲


 科学者と言えば、いつも「何故だ?何故だ?」と考えている人種だと思っておられるとしたならば、それは全くの誤解である。時には「何が」、「何処で」、「何時」、といった疑問を発することもある。専門分野によって興味の対象が異なるから、疑問詞も当然変わってくる。それ故「誰が」、「どちらが」といった疑問を呈することも場合によってはある。ただし科学者は、技術者や工学研究者と異なり、「どのように」という疑問を最初から発することは少ない。思考実験を繰り返し、仮説を実証する段階になってはじめて「どのように」と考えるのである。要するに思考過程が進行するに従い、また実証結果が得られるに従い、「何が、何処で、何故」と疑問詞は次々と変わり、広がってくる。人間の知識欲は実に貪欲なのである。

 このように科学者は疑問を脳裏にきざみ、最初は主観的な観察、時には簡単な測定を行い、その結果を記述しながら総合化して、「仮説」を設定する。ここでは単純に「仮説とは、答えを予想すること、先取りすること」と定義しよう。ただし仮説は、あとから述べるように決して単なる「思いつき」であってはならない。極論かもしれないが、「仮説」を立てられない科学者は失格であると筆者は思う。「仮説」を立てないとそれに基づく「思考実験」や「論理の展開」ができない、つまり「考える」ことができないからである。

 話はそれるが、ポアンカレーは、思考実験や論理の展開方法には、科学者によって様々であるが、直感型と論理型とに大別できると言っている。また寺田寅彦は、科学者にとって必要な素質は、論理を展開できる「頭」と直感できる「心」、および実験する「手」であると言っている。

 話を元に戻そう。「仮説」は研究の「構成」に深く係わる。次回でも述べるが、「構成」とは、技術者の思考過程におけるアーキテクチャーに相当する。正しい「思考実験」が出来るためには、研究の「構成」がしっかりしていなければならない。そうは言っても最初からうまく「仮説」や「構成」が練れるものではない。仮説を設定する時「ああでもない」、「こうでもない」と科学者は煩悶するが、このような煩悶を繰り返して、漸く自信がある仮説を立てられる。この「思考実験」の過程で、初めて他人の論文や既に明らかにされた実験結果を参考にすることが大切になってくる。課題が与えられて直ぐに図書館に行くことは愚かであると前回述べた理由が、お分かりいただけよう。

 さて「思考実験」の過程においては、ガリレオのように対話法で自問自答する科学者もいれば、武谷三男が言っている弁証法思考、あるいは信頼できる研究仲間とアトランダムな議論をする科学者等人さまざまである。これも科学の方法論に関することなので、興味ある読者はその道の専門書を御覧頂きたいが、ともあれ、思考実験を真摯に議論できる環境は、科学者にとって極めて重要であり、科学者は自らそのような環境を創らねばならないであろう。

 アインシュタインやシュレデインガー、あるいは我が国が生んだ湯川、朝永ら理論物理学者の多くは、思考実験を論理的に整理して結論を導いた。しかし、結論と言ってもそれはあくまでも仮説の結論であって、思考実験の段階で終わっている結論は「真理」とは言えない。多くの人達から「真理」であると認証されるためには、あらゆる角度から検討・実証されなければならない。また、時間という濾過装置も必要である。朝永と一緒にノーベル物理学賞を受賞したファインマンは、「限りなく白に近い仮説であっても真理にはなれない」と明言している。しかし、そう厳密に考えなくとも世間一般の評価に従い、あらゆる角度から実証され、間違いはない仮説の帰結をここでは「真理」と呼ぶ。

 これまで時間軸に沿って思考の過程を説明してきたが、思考の広がりを説明するために、形而上、形而下の概念を位置づける軸を導入したい。とりあえずレベルという尺度を用い、思考レベルの上には抽象レベルを、思考の下には経験レベル、実証レベルを置き、最も形而下の尺度として社会貢献レベルを置くことにする。先に思考実験と呼んだ内容は、経験レベルの範疇であり、この後説明する「実験計画」も同じ範疇に属する。さて、正常な科学者は、仮説を実証するべくあれこれと計画をたてる。これが「実験計画」である。実験計画を練る過程も一種の「思考実験」である。その理由は、ある仮説を実証するためには「どのような」装置を、「何処」に、「どのように」作るか、を考えることになるからである。また、この段階では、「実験協力者」を捜したり、「資金=研究費」や「場所」など研究外のことで苦慮することが多い。

「セレンデイピテイ」という言葉を前回紹介したが、本当に世界で初めての物質や事象を見つけるためには、世の中にはない装置作りから始めなければならない。そのような場合、一人で実験装置を作り、一人で運転することは、滅多に出来ることではない。グループを結成して行うことが普通になって来ている。実際、仮説の内容によってはスーパーカミオカンデやSpring8のような巨大な加速器が必要となり、国家予算に頼らなければならない。
 裏を返せば、仮説を提唱する科学者と実証する科学者とが全く同じ人である必然性は必ずしもない。また時間、つまり仮説の提唱と実証の同時性も必ずしも期待できない。事実、仮説が提唱されてから10年、20年後にやっと世界の何処かで装置がつくられ、異なる科学者によって、仮説が初めて実証されるケースがあることは、歴史が証明している。

 このようにして、実験によって、定性的にも定量的にもいろいろな情報や物質を得ることができるが、それらは実証レベルの話である。これらが総合されて、新しい事実、機構、理論が生まれる。その際、実験結果の再現性、一般性、あるいは数値の正確さは、極めて重要な要件となることは言うまでもない。そのために再三実験をくりかえすこと、原理の異なる測定装置を使って検討してみることが大切である。さらに結果に基づき演繹や解析を繰り返し、多くの科学者に承認して貰う手続きが必要になる。

 ここでいう手続きとは、公平かつ正しい判定が期待できる、国際的に評価が高くかつサーキュレーションが良い学術雑誌に、論文を投稿し、受理されなければならないということである。公表された論文は、世界中の研究者、科学者によって点検され、新事実、新機構、新理論として評価され、初めて「真理」として後世に伝えられる。時間が論文の価値を精製濾過し、「真理」は確証される。時には、「独善」として、忘れ去られる仮説もなくはない、いや、こちらの方が多いかもしれない。絶対の叡智が存在するかどうか、筆者には分からないが、歴史に残った論文や真理は、考える動物である人間の叡智(sapiens)と呼んで良いであろう。

 例えばユークリッド幾何学、ゲーデルの不完全性定理、ニュートン力学や熱力学、相対性理論、量子力学、DNAの構造、遺伝子組み換え技術の原理、あるいはまた、ニュートン時間やベルグソン時間の概念など、人類が歴史上獲得した多くの科学分野での叡智はたくさんある。そうした中で、思考レベルの上位概念として抽象レベルを考えれば、新しい事実、機構、理論を得れば得るほど当事者としての科学者や科学者グループの知識、経験は増え、勘も研ぎ澄まされてゆく。さらに自然に対する認識も深まり、新しい問題が発生した時の良い指針が得られるのである。

 以上説明した科学者の思考過程を図1にまとめる。ただし、人類の叡智は社会に対する貢献度と考え、図では一番下に表した。縦軸の各レベルに価値の上下は決してないことを改めて強調させていただき、この項目を締めたい。次回は、技術者・工学研究者の思考過程をお話する。(続く)

「考えることを考える」の第1回は、こちらからご覧頂けます。
考えることを考える

お知らせ
【NEW】 東京おもちゃショー 2006 開催報告

塩ビ製 恐竜の組み立てモデル
 7月13日(木)から16日(日)の4日間、東京ビッグサイトにて「東京おもちゃショー 2006」が開催されました。
 バンダイ、セガサミーグループ、エポック社、タカラトミー、コナミ等の大手メーカー始め、約170社が出展しました。日本空気入ビニール製品工業組合も参加し、浮き輪や、ボート、ビーチボールに加え、緑色の小さな風船を積み上げて作った「カエル」等の展示をしました。親子連れが訪れ、実際に触って楽しんでいました。
 塩ビ関連商品では、カブトムシの形をした消しゴム(アーティストも使う、ペースト塩ビでできています。)や、恐竜の精巧な組み立てモデル、ボール、お風呂遊び用のアヒル等が展示されていました。
 来場者数は、7月13日(木)、14日(金)の商談日に1万6千人。7月15日(土)、16日(日)の一般公開日には7万4千人となり、合計で9万人の方が訪れ、大変盛況でした。
日本空気入ビニール製品工業組合 展示風景

これからの快適な住まい作りセミナー・諏訪セミナーのご案内

 樹脂サイディング普及促進委員会、樹脂サッシ普及促進委員会では、下記のセミナーに参加し、樹脂サイディング、樹脂サッシの紹介を行うとともに、樹脂サイディングの施工実演も行う予定です。

 これからの快適な住まい作りセミナー・諏訪セミナー
    −無暖房住宅へ限りなく挑戦−

・日 時 2006年7月28日(金)
  13:15〜17:00 (受付開始 12:30)
・場 所 ホテル山王閣
長野県諏訪郡下諏訪町諏訪大社秋宮境内
・主 催 信州大学工学部
エネルギー自立型環境調和住宅研究会
・会 費 無料
・参加申込み締切り 7月20日(木)
(定員70名になり次第、締切らせて頂きます。)
※参加希望の方は下記までお問合わせ下さい。
信州大学工学部 社会開発工学科
建築コース 山下研究室
電話:026(269)5360

エネルギーソリューション&蓄熱フェア’06 出展案内

 下記の要領にて「エネルギーソリューション&蓄熱フェア’06」が開催されます。
 本展示会のテーマは「エコロジー&エコノミーの両立」です。
 「エネルギー効率の高い社会」を実現する為には、蓄熱システムやヒートポンプなどの普及が肝要であると考えられますが、これに関連する最新・最適な情報が提供されます。
 塩ビ工業・環境協会、樹脂サッシ普及促進委員会、樹脂サイディング普及促進委員会にて「オール電化住宅ゾーン」に出展し、「窓からの熱損失対策」、「長寿命外装材」等のご紹介を行います。

 ・日 時:2006年7月26日(水)〜28日(金)
      10:00〜17:00

 ・場 所:東京ビッグサイト(西1・2ホール)
       東京都江東区有明3−21−1

 ・主 催:エネルギーソリューション&蓄熱フェア’06実行委員会
       東京電力株式会社
       財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター
       電気事業連合会

 ・入場料:無料

 ・エネルギーソリューション&蓄熱フェア’06のホームページをご覧下さい。
  http://www.tepco.co.jp/solution/fair06/index-j.html

 ・塩ビ工業・環境協会他の出展者詳細情報はこちらからご覧頂けます。
  http://www.tepco.co.jp/solution/fair06/exhibition/ent0014-j.html
編集後記
 ここのところ、サッカーのワールドカップ、テニスのウィンブルドン、大相撲7月場所、プロ野球も前半戦の大詰め、とスポーツ界は花盛りですね。相撲やプロ野球はともかく、サッカーだのウィンブルドンだのは日本時間の深夜や明け方の行事なので、睡眠不足で困る、とぼやいていた友人がいましたっけ。

 ワールドカップについては、この前のオリンピックで懲りたので、マスコミの大騒ぎぶりに「惹きこまれるもんか」と抵抗していたところ、「やっぱり!」という結果になってしまいました。まあ、あんなところが日本の実力じゃないでしょうか。

 それにしてもあの決勝戦でのジダン!やってくれましたね。はた目には「キレタ」としか思えない挙動に、さすがのH2もびっくりしました。後日の解説では、相手の誹謗の言葉に激昂して、「やらねばならぬ」と思ったのだとか。なんとなく、分かったような、分からないような・・・。

 そこで今週のダジャレ。「ズドンと頭突き、ジダンダ踏んだジダン」(H2記)

先週の編集後記についての読者からのお便り・・・[編集後記後]

H2さん、携帯電話を失くされて大変でしたね。私は、編集後記で読む前に、事務所にかかってきた「携帯電話、忘れてない?」というお電話で、知っておりましたが。お電話では、冷静さを装いつつもご心配されている様子が伺えました。見つかって良かったですね。
ところが、「大変」はそれで終わりませんでした。H2さんの携帯電話が見つかった翌朝、Aさんの姿がふと見えなくなり、なにやらほっとした顔で戻っていらしたと思ったら、「携帯電話が見あたらなくて、昨日食事をしたお店に聞きに行ったらあった。」との事。さらに、その日の夕方には、Kさんが「実は、昨夜から携帯電話が見あたらなくて、心配で眠れなかった。」との事。無事、駅に届けられていたそうで、翌日には手元に戻りました。
H2さんは「二度あることは三度ある」のではと心配なさっていましたが、「二人に起こることは三人に起こる」となりました。…(VEC上田)


先週の編集後記をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。
https://www.vec.gr.jp/mag/087/index.html#kouki

VEC関連URL
●VEC 塩ビジュニア https://www.vec.gr.jp/kids/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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