NO.045
発行年月日:2005/09/01

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トピックス
◇鳥になって考えよう
  鳥瞰型環境学の薦め

随想
タイ国雑感(5つの「あ」他)
(社)日本化学工業協会 常務理事 鳥居圭市
お知らせ
編集後記

トピックス

◇鳥になって考えよう

  鳥瞰型環境学の薦め

 先日、国連大学の安井副学長の「鳥瞰型環境学とは何か——宇宙からの視点と日常生活を結ぶ——」と題した講演を聞く機会がありました。
 国連大学では昨年から、夏休み中の2週間に渡り、全国の各大学の修士・博士課程の学生20名前後を集めて、「鳥瞰型環境学エキスパート養成UNUサマースクール」を開講しています。この開講日の8月22日の午後、安井副学長自ら総括講義を行い、たまたまこの講演を聞く機会に恵まれた、というわけです。

 鳥瞰型環境学とは一体如何なるものなのか。このスクールの趣意書には、「環境関連の課題に対する解は、特定の分野を深く掘り下げて考えるだけではダメで、時間的にも空間的にも広い範囲で考察し、なおかつ『正解』を求めるのではなく、『悪くはない解』を求めることが必要である。こういった実践的な知的作業を可能とする学問体系を鳥瞰型環境学と命名する」という意味の言葉が述べられています。

 講義で安井副学長は、地球温暖化問題に始まり、水資源、食料資源、エネルギーなど、いま世界レベルで取り上げられている環境関連の諸問題について解説された後、持続可能な社会への道をどう考えるかについて述べられ、最後に、鳥瞰型環境学とは、地球を地球の外から見ること、人を地球史の中で見ること、それらの知見に立って個人や組織の行動や活動のあり方を議論することであると結論付けました。

 この講義のなかで特に興味を惹かれた論点を2〜3ご紹介します。
地球温暖化問題に対する日本としての対応については、「2012年までの削減不足を、世界最高の省エネ・省資源技術でカバーしつつ、CDMで世界に貢献するべし」としています。熟考すべきコメントです。
人口増加の抑制策に関連して、貧困と飢餓の克服、初等教育の敷衍、女性の活力増大、乳幼児死亡率の改善、妊婦の健康維持、エイズとマラリアの撲滅などを実現することで必然的に人口抑制効果が得られると述べています。興味深い提言です。
WHOのデータに基づく「日常的なリスクによる損失余命比較」を紹介されました。日米欧と全世界平均のそれぞれについてリスクが数値化されていましたが、日本のリスクは抜群に低く、「相対的に見て世界最良の状況にあることは確実」とのこと。確かに、世界平均では、飢えと栄養不足、エイズ、飲料水汚染、高血圧、タバコと酒等がハイリスクで、損失余命合計ではなんと70年以上になりますが、日本ではタバコ(損失余命6.15年)と高血圧(同5.94年)、酒(同1.61年)などが目立つ程度で、栄養関連、エイズ関連、飲料水関連はゼロに近く、損失余命合計でも30年以下です。

 環境問題の解決策は単純ではない、いろいろな立場からの考え方を考慮し、「悪くはない解」を求めることが必要である、というくだりは、私たち塩ビに関わってきたものにとってはまさに我が意を得たりのコメントです。
 塩ビにも勿論欠点もありますが、それを補って余りある長所、メリットが発揮できる場面が一杯ある、と私たちは考えます。地上の視点で考え、判断するのではなく、空を飛ぶ鳥の視点に立って、「鳥瞰型塩ビ環境論」で判断して欲しいものです。

■随想

タイ国雑感(5つの「あ」他)

(社)日本化学工業協会 常務理事 鳥居圭市
 1996年の2月から1998年の2月までの約2年間、タイ国に何回か出張し、大変貴重な経験をしました。それは文化の異なる地域、人達と、駐在員ではないけれど単なる旅行者でもない立場、気持ちで接することが出来たということです。
 現在のタイ国は、日本とFTA基本締結に至るなど、政治・経済の両面で見事な状況に見えますが、約8−9年前の見聞を、ここに改めて振り返ってみるのも何かの参考になるかと考え、以下にご紹介します。

言葉の壁
 タイ語は全く見たことも聞いたこともなかった私でしたが、最初の訪問時にはホテルに宿泊したものの、その間にバンコクのルンピニ公園の近くのサービスアパートを契約しました。
 このアパートは割りと古く、部屋数も少ないところで、受付の人は英語の出来ない人が大半でした。従って最初からタイ語の洗礼を浴び、大変困りました。
 また、週末にゴルフに誘われて行ったところ、キャディーが英語が話せず、三番ウッドといってもスプーンといってもダメで、結局自分で取り出すといった有様でした。まあ漫画みたいな環境に置かれた次第です。
 仕事で相手する人達はイギリス等への留学組がぞろぞろいて、我々(少なくとも私)よりは英語が堪能な人が多いのですが、一歩仕事から離れた時にはタイ語の壁に直面したわけです。
 そこで、アパートで簡単な朝食を作って食べる、朝の30分をタイ語の勉強時間と決めました。具体的には買ってきていたタイ語のカセットを毎日流す。その内9割は復習、1割が新しいレッスン。これを続けました。
 覚えた気分になると使ってみたくなります。アパート、会社、食堂の人、等々機会はいっぱいあります。自分が覚えた言葉を使ってもなかなか通じない。ですが面白半分にこれを繰り返すうちに少しずつ在庫が増え、2ヵ月位経ってからは最低必要な言葉は一応言えるようになりました。
 聞く方は話すのに比べはるかに難しいのですが、「あなたの言ったことは解らない」という何とかの一つ覚えを乱発して何とか繋ぎながら入り込んでいった次第です。
 思わぬ効用の一つは、仕事の時間中の事です。英語でやりとりしている間にちょっとタイ語を混ぜてやると相手はきょとんとします。これがコミュニケーションを深める為にも役立ったと思っています。

五つの「あ」
 タイに関係するようになって割りと早いうちに、何人かの日本人の方から「五つのあ」を言われました。それは「あせるな」、「あわてるな」、「あてにするな」、「あきらめるな」、「あたまにくるな」の五つでした。つまり、日本人がタイ人と付き合う時の心得集みたいなもので、そういう心の備えがないとやってられないよ、と言うサジェスチョンです。かってサウジアラビアを訪問した時には「インシュアラー」(神のみぞ知る?)という言い訳言葉を教わった事がありますし、おそらく外国人から日本人に対しても似たような意味の揶揄言葉があるのでしょう。
 さて、この五つの「あ」は、タイで仕事をした過程でしばしばトランキライザー的な効能をもたらしてくれました。議論を積み重ね、一つの区切りがついたと思った矢先にコロッと前言を撤回された時、互いに宿題を課した次の会合で先方がこちらの期待と全然違う程度の事しかやってなかった時など、カーッと切れそうになるのですが、五つの「あ」だな、と思って何とか冷静に対処する事が出来たものでした。
 極く一部の人々と接しただけで「タイ人云々」というのは極めて危険で偏った見方になるのを承知で、敢えて私論するなら、彼らは怠慢とか言うのでなく、おおらかな気持ちと、自分中心というか、駆け引き上手というか、もしかしたら大変な才能を持った人達なのかもしれません。
 私の机の上には、かの山本五十六元帥が書いた「男の修行」のコピーが、多分20年位前から置いてあります。曰く、「苦しいこともあるだろう」、「言いたいこともあるだろう」、「不満なこともあるだろう」、「腹の立つこともあるだろう」、「泣きたいこともあるだろう」、「これらをじっと我慢して行くのが男の修行である」と。
 五つの「あ」とこの「男の修行」は何か共通するものがあるような気がします。

食糧自給率200%
 人口六千万人で食糧自給率200%という国家はタイ以外にそんなに多くはないから、食糧安保の観点からも大事に付き合ったほうがよいと、ある時言われました。
 私がタイを気に入り、もし状況が許せばそのままタイに駐在してもいいな、と思ったのにはいくつか理由があります。日本から派遣されると3階級特進した位に待遇が良くなる(少なくとも当時はそうでした)。広い住居、立派な車それも運転手付き(言葉の問題と渋滞の激しさから日本人による運転は極めてリスクが高いから)、安い物価、良好なゴルフ環境、そして、人の顔や性格等からタイにいて違和感が感じられない、等々がその理由です。
 なかでも「食」に関しては私なりに十分に楽しみました。バンコクには和食、中華、ドイツ、イタリアといった、ほぼ世界中の料理店(レストラン)があります。それに加えてタイ料理の安くて美味しいことが魅力です。
 かねがね海外旅行の時にその国の言葉でメニューが理解できたら楽しみが倍増するだろうと思っていました。今回、図らずも長期滞在が可能となり、また最初に食べたタイ料理が美味しかったので、「言葉の壁」への挑戦を兼ねてトライしました。
 何をしたかというと、レストランに行って気に入った料理に出くわした時、店の人にこれはなんと言いますかと尋ね、彼(彼女)の発音をカタカナでメモします。同時に自分で食べたそのメニューの簡単なメモ(例えばカナーナンマンホイ・緑の茎の太い野菜の油炒め)を残しておきます。これがいくつか貯まった時点で、会社の現地女子社員にタイ語のメニュー(カタカナ文字を極力努力してタイ語流に発音します)を渡し、日本語で書いたメモを英語で説明します。すると彼女がタイ語でメニューを書いてくれます。
 この作業を繰り返すうちに「足で稼いだタイ料理メニュー」が貯まります。結局40種類くらいまでいきました。これがあるとレストランに行っても自分の意思で注文が出せ、日本からの短期出張者(上司とか)をタイ料理店にご案内しても大過なく楽しむ事も出来ます。この私設メニューはワープロになっていますが、タイ語の欄だけ手書きなので、再発行できません。何人かの人にはコピーを差し上げ、多分利用して頂いたと思います。
 自給率の話に戻しますと、要はレストランで楽しむだけでなく、豊かな自然の中に豊富な食糧がワンサとある国がタイです。因みに不景気になって失業しても、田舎へ帰れば餓死することなく過ごせるのだそうです。こういう国と我々が、工業とか技術とかを提供して仲良くするのは悪いことではないなと思った次第です。

お知らせ
【NEW】 勝ち組工務店育成セミナーIn山口 参加報告
 樹脂サイディング普及促進委員会では、去る8月23日(火)に山口県周南市で行われた「住いづくり研究会」主催の「勝ち組み工務店育成セミナー」に参加し、「顧客に喜ばれる樹脂系外装施工事例の紹介」の講演を行いました。
 セミナーでは、研究会を主催される福岡大学工学部建築学科の須貝高教授より「今、顧客の心を掴む住宅とは何か!」、建材技術コンサルタントの杉本氏より「住いの健康を考えた開口部のあり方」の講演が行われ、引き続いて樹脂サイディングを使用した住宅の見学会も行われました。
 当日は、山口県の方ばかりでなくお隣の広島県から参加された方もおられ70名近くの参加を頂き、盛況のうちに終了致しました。


日経住まいのリフォーム博2005(第1回)出展案内
開催日時 2005年9月15日(木)〜18日(日)

10:00〜17:00(最終日のみ16:00まで)

開催場所 東京ビッグサイト(西1・2ホール)
入場無料

主  催  日本経済新聞社

樹脂サッシ普及促進委員会、樹脂サイディング普及促進委員会にて出展致します。
9月15日(木)14:00〜14:20 会場ステージにて樹脂サッシ普及促進委員会で、内窓樹脂サッシの取付実演を致します(無料)。是非、ご来場下さい。

編集後記

 夏休みも終わり近くなったある日のこと、例の小学1年生のピッカピカちゃんが、わが家人と、近所のお菓子屋さんに買い物に行ったんだそうな。
 「どのお菓子にする?」、「あそこにある、緑色のがいいな」、「じゃあこの、1つ157円の水羊羹を3つと、夜帰ってくるジージのためにはこっちの90円のお饅頭を1つね」てんで、お店のおばちゃんにお勘定を頼んだところ、おばちゃんが電卓を取り出すよりも早く、くだんのピッカピカちゃん、大きな声で、「561円よ!」と。
 家人がびっくりして、「どうやって計算したの?」と聞いたら、いわく「100円が3つだから3回足して300円、50円を3回足して150円、7円を3回足して21円、それと90円と足して561円」と、澄ましたもの。
 聞いてたお店のおばちゃんが感心して、「えらい!ご褒美にもう1つあげる」という訳で、157円の水羊羹1つ儲かった、とのお話でした。

(H2記)


VEC関連URL
●VEC 塩ビジュニア https://www.vec.gr.jp/kids/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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