NO.036
発行年月日:2005/06/23

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トピックス
◇社会を惑わす3つのセリフ
  まだまだ「風評」は消えてはいないのでしょうか?

随想
素材産業は日本を救う
 —— たとえ時代遅れの資本主義であっても ——
日本化学エネルギー産業労働組合連合会(JEC連合)
JEC総研代表 山本喜久治
お知らせ
編集後記

トピックス

◇社会を惑わす3つのセリフ

まだまだ「風評」は消えてはいないのでしょうか?

 知人の娘さんが目出度く結婚に漕ぎ付けたというので、家人と相談して某有名花屋で、奮発して立派な花束を贈ることにしました。いろんな種類の花を束ねてもらって、包装紙に包んで、紙袋に入れてもらって意気揚揚と出てきて、しばらくして良く見ると、その包装紙の片隅に、こんな文句が書いてありました。曰く「この包装紙は燃やしてもダイオキシンを発生させない素材で作られています」と。

 先週、私たちVECの事務所にやってきた、塩ビの加工業界の仲間が、悔しそうに実物を見せて、「この景品、某カード会社のおまけで貰ったんだけど、こんなこと書いてあるんだよ」といいました。見せてもらうと、曰く「この商品は、焼却時ダイオキシンの発生しないポリ○○素材を使用しております」と。

 先週末、久しぶりに家人と食料品の買い物に、近所の某デパート系スーパーに出かけました。野菜に肉類、パンやら果物など買い込んで、いよいよ本命の魚売り場へ。美味で安価なものを目指して鵜の目鷹の目。ふと気がつくと魚売り場の片隅に張り紙が・・・。曰く「私たちは地球に優しい企業を目指して、燃やしてもダイオキシンなど有害物質を発生させない、ポリ○○系のラップフィルムを使用しています」と。

 「塩ビとダイオキシン」騒動は、いったいいつまで続くのでしょうか。塩ビはダイオキシン発生の主要因ではありません。その証拠に、塩ビの生産量や出荷量とは無関係に、焼却設備の改善や焼却条件の整備によって、わが国のダイオキシン発生量はいまや数年前に比べて数%程度にまで減少しています。この事実が明らかになるにつれて、それまで一時塩ビを敬遠していた、塩ビのユーザー企業も、徐々にそれまでの主張を変えて、塩ビの有用性を見直し、適材適所で塩ビを再び使い始める動きが大きくなってきています。

 さらに申し上げれば、塩ビ以外の他素材でも、焼却条件によってはダイオキシン発生の要因になりうること、また、ダイオキシン以外の有害物質についていえば、塩ビに比べて数千倍、数万倍も多く発生させる素材もあることも分かっています。有害物質について議論するのであれば、塩ビだけをバッシングするのはいかにも片手落ちです。
 ましてや、塩ビはLCA的に見ても、省エネルギー、省資源、省CO2で、「地球に優しい」素材なのです。

 そう考えると、塩ビを称して「ダイオキシン発生の主要因」、「塩ビ以外の素材は燃やしてもダイオキシンを発生させない」、「塩ビを使用しないことが地球に優しい証拠である」、などというセリフは明らかに間違っており、数年前の、いわゆる「塩ビたたきの風評」華やかなりし頃ではともかく、今やまったく時代遅れなのです。

 いまだにこういったセリフを信じ、印刷し、世間に公表している向きに対して、私たちは大きな憤りを感じます。間違った事実に基づいて間違った素材選択をしているだけでなく、そのことをして、あたかも社会に対して貢献しているのだと胸を張られるに至っては、憤りを通り越してしまいます。

 上記の例に出した、小売店や流通業界や消費財生産者の皆様、是非こういった事実をご認識いただき、従来からの「風評」に惑わされることなく、正確な判断に基づく情報を社会に発信していただきたい、と私たちは心から願っています。

■随想

素材産業は日本を救う

 —— たとえ時代遅れの資本主義であっても ——
日本化学エネルギー産業労働組合連合会(JEC連合)
JEC総研代表 山本喜久治

 今年の初めに「ニッポンの素:ルポ 『今』を支える素材産業」武田徹(新宿書房)という本を知り、読んでみた。著者はメディア論とかジャーナリズムを主領域にした評論家ということだが、化学、窯業、金属、エネルギー等、最近ではほとんどの人が目もくれないような産業を丹念に取材し、産業の根っ子の部分を巧く取り出して示してくれている。もともとは雑誌に掲載されたものだが、著者自身がなぜこういう渋いジャンルに興味を感じたのか、巻末の一句から引用すると、「完成した商品に幻惑されるのではなく、それを作っている素材のレベルまで降りて考える。」という視点で、今の文明社会のゆがみを捉えようとしたからだ、と意図を語っている。

 塩ビに関わるものとしてはソーダ工業塩についてのルポがあり、原塩からソーダ工業製品までを生産する工場の巨大さに感激した様子を綴っている。また食用塩について、イオン交換膜製品と「自然塩」との比較も合理的に説明されていて面白かった。最近では産業に関する社会の関心が薄れ、マスコミの興味もIT産業だのネット起業といったところに集中しがちになっている。経済の現状や先行きに大きな問題を抱えているわが国だけに、産業の浮沈は実は国民の仕事と生活に関わる大問題なのだ。ところが、その産業を研究したり評価したりする学問や業績は、むしろ長期的にジリ貧状態といってよい。大学でも、かつては産業論なり産業構造論あるいは産業史という講座が、経済学部や商学部には普通にあったが、いまは風前の灯という感じのようだ。

 最近になって、ものづくり重視や製造業復活論が、藤本隆宏氏らによって提唱されるようになり、産業のなかでも素材産業の石器時代的なイメージもそれなりに、変化しているようだ。それにしても、何百億を瞬時に稼ぎ出す(その逆もあり)金融マーケットに関連した産業から見れば、いったん投下した資本を何十年にもわたって回収する悠長な素材産業は、きょうびの基準でいえば、資本主義システムとは言えないのかも知れない。しかし通信・情報の基幹技術を支える材料を、こうした長い収益トンネルを迂回して、誰かが供給しないことには、多様な金融テクの対象となるIT関連企業も現実に活動できない。

 過去何回か、「素材産業の使命は終わった」という宣告を聞いた覚えがある。中国効果と米国国民の浪費癖のお陰かは知らないが、わが日本の素材産業は今のところ、世界のなかで互角以上に渡り合っている。これは、存在するものすべてを資本の利潤に変えてしまう原理的キャピタリズムを警戒し、信頼されるものづくり経由のほどほどの利潤を是しとして、産業が生きてきたからである。何十年もの間、愚直に赤字を出しながらも一つの製品をつくり続けてきた業界もあると聞く。とどのつまり、わが国にはこういう資本主義が適合するのだろう。人の真似をすると必ずや無理が出てくる。

 神様のご褒美なのだろうか、最近こうした、じっと我慢の素材企業にも史上最高クラスの利益が出ているようだ。これは勿論すばらしいことだ。色々面倒なことも多いが、ものをつくって利益を出す、この当たり前の流れを経営者も労働者もまた世間も改めて認識する必要がある。

 冒頭紹介した著者の武田氏のいう、「文明のゆがみ」を私なりに解釈すると、ハイテクであれ、ローテクであれ、社会の求めに適う製品や技術を提供することを、遠回りや非効率とするようなビジネス観や産業観そのものだと思う。

お知らせ
展示会出展のご案内
「上越市環境フェアー2005」に、出展します。

テーマ ストップ地球温暖化は「環境のまち上越」から
開催日時
2005年6月26日(日)
午前9時開場、入場無料
開催場所 上越市市民プラザ
主  催 上越市
出展内容 塩ビ工業・環境協会は、NPO法人エコネット上越さんのエコ商品コーナーに、樹脂サッシ、樹脂サイディング、及び各種塩ビリサイクル製品事例を展示・紹介します。


PVC Newsが6/14に発行されました。

PVC News 53号(塩化ビニル環境対策協議会)が発行されました。
詳細は下記からご覧頂けます。
購読を希望される方は、送付先などご連絡下さい。
http://www.pvc.or.jp/index/i_saisin.html

セミナー

樹脂サイディング普及促進委員会でセミナーを開催しております。


これからの快適な住まい作りセミナー・松本セミナー
−無暖房住宅へ限りなく挑戦−
日時
7月1日(金)13:15〜17:15
場所 渚カナデアンホール
主催 信州大学工学部
エネルギー自立型環境調和住宅研究会
参加申込み締め切り
6月24日(金)
    (定員60名になり次第、締切らせて頂きます。)

参加希望の方は下記までお問合わせ下さい

樹脂サイディング普及促進委員会
電話 03(3297)5782
Fax 03(3297)5783

「塩ビ製品カタログ」が発行されました。
「塩ビ製品カタログ」(塩化ビニル環境対策協議会/塩ビ工業・環境協会編)が発行されました。
私達の日常生活のあらゆる場面に登場し、その豊かな生活の一端を担う塩ビ製品の主要なものをまとめた小冊子です。
ご希望の方は、下記URLよりご請求下さい。
https://www.vec.gr.jp/shiryo.htm

編集後記

 先々週にクールビズの話を書きましたが、実は私たちVECは6月から、ノーネクタイにノー上着、オフィスの冷房温度高め設定という、クールビズモードに切り替えました。協会内で正式に決議し、会員企業にも宣告し、マスメディアにも宣言して一部新聞にも取り上げられました。
 この「ノーネクタイ」というやつ、実際やってみると、らくちんで涼しくて、ホントにいいものですね。一度やったら、二度とネクタイ締める気になりません。そのかわり、ノーネクタイに似合うワイシャツを購入する羽目になって、家人はやや複雑な気持ちの様でしたが。
 それともう一つ。ネクタイやさんには、ちょっと可哀想ですよね。背景は違うものの、なんとなく、一時の塩ビ業界と相通ずるところ、なきにしもあらず。

(H2記)


VEC関連URL
●VEC 塩ビジュニア https://www.vec.gr.jp/kids/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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